パリ・La Tour d’Argent





レストラン La Tour d'Argent から見たノートルダム寺院


トゥール・ダルジャンの歴史


1582年:
セーヌ河とベルナルド会修道院の間に、『トゥール・ダルジャン』の看板でエレガントな料亭がオープンしました。国王アンリ三世の注文により、ここで初めてフォークが使われるようになりました。

1600年:
トゥール・ダルジャンは大評判となり、<アフリカ鶏>や<森のうなぎ>を味わうためにテーブル争いまで起こるようになりました。アンリ四世は、トゥール・ダルジャンの<アオサギのパテ>が大好物でしばしば人を遣わしました。

ルイ十四世時代:
ヴェルサイユの宮廷人がトゥール・ダルジャンの顧客となりました。リシュリュー公爵は、40人の招待客のために、30もの料理法で調理された牛一頭と、当時入ってきたばかりのコーヒーをふるまいました。ヴィトレ城でセヴィニエ夫人はトゥール・ダルジャンの甘美なチョコレートを偲びました。

摂政時代:
1720年頃、軽い夜食が流行しました。摂政オルレアン公が評判の踊り子アイセやジュノン・パラベールを連れてトゥール・ダルジャンで饗宴を催しました。

第二帝政時代:
モルニー公爵がトゥール・ダルジャンで愛妾達をもてなしました(許さじ!)。放蕩で名をはせたミロール伯やカルヌヴァル氏も友人達をもてなしました(許す!)。ある日、オーナーのルコックが菓子職人に変装し、美しきル・オン伯爵夫人は夫の歯科医と見間違えてびっくりします。

第三共和制時代:
オーナーのフレデリックが初めて”Canard au sang”を創作しました。それ以後、名物料理となったトゥール・ダルジャンの鴨には全て通し番号が付けられることになりました。

1914年:
新オーナーのアンドレ・テライユが、アドルフ・デュグレレの秘伝のレシピーをつけ加えました。また、テライユがクロディヴス・ブルデルの娘と結婚し、カフェ・アングレのワインの逸品の数々も付け加えられました。

1921年:
裕仁皇太子がトゥール・ダルジャンで鴨料理No.53211を召し上がられました。

1936年:
天気の良い日には、6階のテラスのテントの下でお茶が飲めるようになりました。やがて、太陽のもとで食事もできるようになりました。

1947年:
クロード・テライユが父の後を継ぎトゥール・ダルジャンを統治するようになりました。

1953年6月13日:
明仁皇太子がトゥール・ダルジャンで鴨料理を召し上がられました。

1958年:
ガストロノミーの芸術と歴史が集められ、トゥール・ダルジャンの”テーブルの小サロン”が開設されました。

1964年:
カーヴには、40万本のワインがストックされ、<ワイン蔵の名誉>通が葡萄の物語を説いてくれるようになります。

1971年:
昭和天皇がトゥール・ダルジャンを再訪されました。

1982年:
トゥール・ダルジャンの開店400年記念でした。

1984年3月21日:
徳仁皇太子がトゥール・ダルジャンで鴨料理を召し上がられました。

1990年:
番号付き鴨料理の百年記念でした。

1992年:
聖アンドレの日に、トゥール・ダルジャンは評判となった名オーナー達に敬意を捧げました。

”食卓の芸術とは五感を満足させるものである。”
”喜びほど貴重なものはない”

クロード・テライユ



さて、世界で最も有名なレストランは。。。と言いますと、星の数ほどもある中から『トゥール・ダルジャン』を挙げる方は多いでしょう。400年以上に亘る長い歴史、やんごとなき皇族・貴族から伝説的な大富豪や有名スターなどの華麗なゲストの数々。。。到底、私のような名もなき日本人が訪れられるようなレストランではないと思っておりましたら、そんなことはないのです!マナーさえちゃんと守れるような人なら誰でも行けるレストランなのです。

そうは言っても、首尾よく予約を受け付けてもらうにはそれなりの努力が必要です。恵比寿のどこかのレストランのように、3ケ月先まで予約で一杯。。。であれば、短期間の旅行者にはまず無理ですね。ニューオータニ内にある東京トゥール・ダルジャンに行くしかありません。日本から予約を入れておくのが一番確実ですが、パリで前日に予約することも不可能ではないのです。でも、電話で予約するのはやめて、直接お店に行って予約を受け付けてもらうようお願いするのです。それも、ちゃんとした服装を着用してね。

パリのトゥール・ダルジャンは外見からはレストランとは見えず、まるで倉庫のような雰囲気の建物に入っています。入り口には真っ黒い、厳めしい頑丈な扉があって、ちゃんと門番の方もいらっしゃいます。この扉の中に入って、受付で予約を取りつけるのは結構度胸が要ります。明後日は日本に帰らなければならないと泣き付く、もう二度とパリに来る機会がないと拝み倒す。。。そこまでやる必要はないでしょうけど、誠意を尽くすことは大切です。それともうひとつのポイントがあります。ディナーでなく、ランチを選ぶことです。単に予約が取りやすいというだけでなく、高級レストランのマナーに慣れない人には格式高いディナーの席で恥をかかないように振る舞うのが大変だからです。お値段も分からないような高価なワインを注文して心配のあまり喉も通らないよりかは、パリの青空でも眺めながらランチ・メニューにお値段が明示してあるワインを安心して飲む方がいかばかりか楽しめることでしょう。

トゥール・ダルジャンの名物料理は?と言えば、そう『鴨料理』ですね。勿論、ランチと言えどもちゃんとこの鴨料理が食べられるのです。しかも、食べた人には100年も前からの連番プレートが渡されます。とにかく話のタネとして一生に一度だけ行きたいという方には、ランチを選択されるのがよいのではないかと思います。



鴨料理を創作したフレデリックさんが調理しているところです。


さあ、当日になりました。予約した12時ピッタシに着く予定が、慣れない地下鉄で乗り換えを間違え、駅からダッシュします。7月の中頃ですから、如何にパリと言えども暑い!おまけに、ブレザーに長袖のシャツを着てその上ネクタイを締めているからダッシュするとシャツの中に熱がこもってもう大変。。。ま、10分程度の遅刻で済んだから良かったようなものの、あれで道に迷っていたらこのレポートはなかったですね。

ようやっと例の黒い扉の前に立って受付の方に予約した旨告げます。1階には席はなく、展示用と思われるテーブルがあるだけです。これが『ガストロノミーの”テーブルの小サロン”』なのでしょうか?



エレベータ係の方に連れられて6階のメイン・ダイニングルームに案内されます。エレベータの扉が開くと同時に、大きなガラス窓から眩いばかりの外光が差し込んできます。部屋自体は想像していたほど広くなく、テーブルの数も大小合わせて20個位でしょうか。楕円形の窓に合わせるようにテーブルがセットされ、奥のテーブルも窓側からせいぜい3列位のところに位置しています。従って、どの席からでも窓の外に広がるパリの街並みが展望できる訳です。また、殆どの席からノートルダム寺院の塔が望められ、特に窓際の席からはセーヌ河の流れが見てとれるかもしれません。座席数よりも展望を大事にしたところなどは、さすがに超有名レストランらしい心遣いですね。



あの窓際の席に座りたいよぉ。。。


トゥール・ダルジャン午餐メニュー 


1.食前酒: [オリジナル・シャンパン]

ランチとは言っても、やっぱしシャンパンで始めないと格好がつきませんよね。トゥール・ダルジャンでは、ランチ・メニューの中にオリジナル・シャンパン(勿論グラスですが)が組み込んでありますので(これは後で知ったことですが)、安心して食前酒が楽しめます。ちなみに、この自家ブランドのシャンパンはレストランの向かいにある売店で買うことができます。ヴーヴクリコに似た、とても爽やかで重厚な味のシャンパンです。

2.前菜:

ランチメニューは3コースが基本のようです。前菜といっても、カルパッチョとかムースとかの軽い一品ではなく、本格的な肉・魚料理です。メイン料理にも劣らない素晴らしい味付けがされています。トゥール・ダルジャンのトゥール・ダルジャンたる所以のものは、その洗練されたソースにあります。私の貧弱ではありますが割と豊富な食の経験からして、このソースはただものではありません。実に奥深く人間の持つ全ての味覚を残さずついてくるのです。これはお料理の技術というよりは食の芸術と言った方が良いでしょう。トゥール・ダルジャン以外では絶対に味わえない最高の味だと思います。



左がフィッシュ系前菜、右がミート系前菜です。


3.メイン: [鴨料理]

で、いよいよ鴨料理なのですが、別に鴨ちゃんがネギをしょって丸ごと出てくる訳ではありません。普通のロースト肉のような感じです。何でも鴨を鴨場からレストランに送る前から特別な飼育が行われ、最高の状態でゲストに供するのだそうです。それにしても、この鴨肉の柔らかさ、完璧なソース、正に食の芸術です。





左側が鴨料理と記念の連番プレート、右側がお魚のメイン料理です。


4.デザート: [アイスクリームとチョコレート]

デザートがまた素晴らしい。。。洗練された大人の味は当然としても、その色彩の素晴らしさにも圧倒されます。お皿に入ったデザートの他に、小さなバスケットに入れられたプチ・チョコはまるで宝石箱を見ているようです。



食後のデザートを楽しんでいますと、向かいの窓際の席に、慣れた感じの老夫婦が座られました。お店の方がしきりと気を遣われるのは、その老人がよほど名のある方だからでしょうか?



ランチのお勘定はメニュー通りのようです。私の場合はランチと同じ位のお値段のワイン(ここをご覧下さい)を頂きましたので倍にはなりましたが。。。



これはお化粧台ではなく洗面所です。ペーパーなんか使わず、おしぼりが用意されています。さすがに違いますね。。。


という訳で、トゥール・ダルジャンの午餐は何の誤算もありませんでした。私のような者を常連さんと分け隔てなくおもてなし下さったトゥール・ダルジャンは、やはり世界一のレストランです。







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