アヴィニヨン・PALAIS DES PAPES





ストロベリー・フィールズやペニー・レインには何が何でも足を運んだ私ですが、セザンヌの足跡にはまるで興味はありません。時計を見るともう午後3時を回っています。今夜の宿を早く確保しなければなりませんので、そろそろエクスに別れを告げて次の訪問地アルルに向かいましょう。エクスからアルルまでは100km位でしょうか。途中の高速道路は良く整備されています。アメリカのインターステート・ハイウエイで時々出会った穴ぼこなどどこにもありません。日本と違ってあまり数はありませんが、サービス・エリアも所々に設置されています。規模の大きなところには宿泊設備もありますので、どうしてもホテルが見つからないといった事態になったら最後の手段にはなります。

エクスを出ますと直ぐに広大な緑と農地が広がります。時々ゴツゴツした岩山にも出会いますが、おおむね長閑な風景が続きます。このあたりには葡萄の木もあまり見当たりません。途中でサービス・エリアに立ち寄ります。売店にはさすがにワインは置いてありません。特大のアイス・チョコ棒を買って食べたら甘くてとても全部は食べれませんでした。。。

小一時間ほど走ったらアルルの街に到着です。今夜はここで宿をとろうと思い、たまたま車を停めた場所の近くで見つけた2つ星のホテルに向かいます。途中で会った地元の人に聞きますと、アルルの街の中心はほんの目と鼻の先にあるとのこと。じゃーーーと、再び車に乗り込みアルルの街の中心に向かいます。ほんの2−3分走ったら急に道が狭くなり、同時に人と車が増えてきました。アルルの街はとても小さく、ここがその中心地なようです。パブリックの駐車場が満杯だったので、とあるホテルの前庭に車を停めます。よくよく見ますと、このホテルはなかなか格式がありますね。ここに泊まりましょうか?早速フロントに行って交渉します。生憎、7月の初旬には国際的な催しが開催され、フロントの方の言葉をお借りすれば、『ありとあらゆる宿泊施設が近郊のホテルを含めて満杯!』とのこと。エクスは音楽祭、アヴィニヨンは演劇祭、アルルは写真交流祭と、この時期この地域で予約なしにグッドなホテルを見つけるのは至難の技のようです。

諦めて、幾つかのホテルを当たりましたが、言われた通りどこも満杯です。そうなったら時間が惜しくなります。手早く観光して次の訪問地に移動しましょう。ちなみに、たまたま私が車を停めたホテルは、『Jules Cesar』という大層な名前のホテルで、フランスでもかなり高級な部類に入るのだそうです。確かに、外観だけでなく、内装も素晴らしいものでした。



さて、あまり時間もありません。観光客でごった返す細い通りを進みますとちょっとした広場に出ます。レビュブリック広場と言うのだそうです。この広場に面してサン・トロフィーム教会があります。もう午後も遅い時間でしたが、ちょうど結婚式があっていました。教会の出口の階段に敷物が敷かれ、民族衣装に着飾った女性達がお祝いのアーチを準備しているところでした。どんなセレモニーが始まるのだろうかと興味シンシンで待ち受けます。大勢の観光客もシャッター・チャンスを狙って一斉にカメラを構えます。出口の横には小太鼓を抱えた楽隊役(といってもたったの一人ですが)のおじさんが待機しています。やがて、そのおじさんがやおら笛を吹き始めます。器用にも、小太鼓も一緒に演奏するのですが、これが妙に哀愁を帯びてしかも絶妙のメロディーなのです。演奏する曲は勿論『アルルの女』です。実にうまいですねぇ。。。



出口の扉を背にして太鼓を抱え笛を持ったおじさんがいます。


そのうちに、次から次へと新郎新婦の親兄弟、親戚一同、友人知人と思しき方々が出てきます。どこの世界も同じ光景ですが、民族衣装の華やかさとアルルの女の親しみやすいメロディーはさすがに感激します。最後に花嫁と花婿がお出ましです。世界中から集まった観光客を目の前にしての結婚の誓いは生涯忘れ得ぬものとなることでしょう!



このバックの音楽が哀愁を帯びていて結婚式なのに何故か物悲しい。。。


時計を見たらもう夕方の6時です。アルルにはまだまだ観光スポットがあるのですが、日の明るいうちにホテルを見つけなければなりません。最後にゴッホの絵で有名な『アルルの跳ね橋』を見てアルルを離れようとしたのですが、結局道が分からず諦めました。こういった観光地への標識はイマイチのようですね。久しぶりのドライブでさすがに疲れてきました。どこで今夜の宿泊地を見つけましょうか?『地球の歩き方』を見ますと、近郊のニームという街が比較的大きく、ホテルも見つけやすいだろうとのこと。仕方ありません。ニームに向かってまた車を走らせます。



ニームは、古代ローマ人の遺跡で有名なフランス南西部の町です。まわりの村に比べれば遥かに大きな街並みですが、日本のような賑やかさはあまり感じられません。アルルとかアヴィニヨンほどはポピュラーではないので、シーズンでも観光客で満ち溢れるということはありません。その割にはホテルの数が多いので、観光地で宿がとれない場合はニームでホテルを探すのも一つの方法です。



車で道に迷っていましたら何かローマの遺跡らしいところに出会いました。。。


ニームに近づいてきました。街外れから見ても高層ビルがあり、かなり大きな街のようです。街中に入るとあまり人が見受けられません。ホテルもあるにはありますが、外観が古ぼけてちょっと泊まる気になれません。何件かホテルを見たあとで、いよいよせっぱつまり、とある広場へ辿り着きます。ヘトヘト。。。ふと見ますと広場の片隅にホテルが見えます。しかも4つ星です!



ニームの街中には大きな通りがある反面、古代からの歴史ある街のせいか、ちょっと奥に入ると狭い路地が入り組んでいて初めてのドライバーにはなかなか運転し辛いところです。コンコルド・ホテルは大通りから少し入ったフォンテーヌ庭園のそばにあります。もっとも、私がこのホテルを見つけたのが長時間のドライブの後の夜の8時前だったため、近くを見物する気力はもはや失せていて、そんな有名な庭園が近くにあるとは全く気がつきませんでした。



時刻も7時をまわり、ま、高くてもいいか。。。と意を決してフロントに行きます。おや、ロビーはオールド・ヨーロピアン・スタイルのなかなか名門ホテルのようです。



思い切ってフロントの方に訪ねます。『今夜お部屋は空いているでしょうか?』。。。『ハイ、ございます』。『ヤッター、ヤッター、ヤッターマン!』状態です。早速手続きして部屋のカギをゲットします。いっぺんに疲れが出てきました。もう外出して地元のレストランを探す気力なぞ、ひとかけらも残っていません。車のキーをボーイさんに預け(そうなんです!映画の1シーンみたいにね!)、フロントのお姉さんの言われるまま今夜のディナーを予約します。旅装を解きに部屋に上がりましょう。部屋は3階にあります(日本式には4階ですが)。ゆったりとしたソファーの置いてあるロビーから部屋までは、まるで映画に出てくるような古めかしいエレベータに乗っていきます。ドアも自分で閉めないといけないし、ちょっと恐いですねぇ。。。後で『地球の歩き方』を見たら、ちゃんとデラックス・ホテルとして紹介してありました。道理で部屋の内装も奇麗だし、バスなどの設備もとてもしっかり出来ています。よく予約もなしに泊まれたものだと今思うと冷や汗ものです。

汗まみれの体をシャワーで流してサッパリしたら、さーーーあ、超豪華ディナーが待っています。このホテルは地元の名士もよく利用されるらしく、なかなか格調が高いですね。中庭には小さいながらも素敵な噴水があります。こんな噴水を目の前にしながらの超豪華ディナーは生涯忘れ得ないものとなるでしょう。



ホテルのレストランは中庭に面しています。夏の遅い夕日を浴びて黄金色に輝いています。勿論、中庭との仕切りは何もありません。つまり、建物の中に居ながらにしてオープンな雰囲気でお食事が楽しめる訳です。



さあ、豪華賢覧たる晩餐の始まりです。アラカルトでも勿論構わないのですが、今夜は特別っ!ホテル・コンコルドの特別メニューを注文します。



お値段は確か350フランだったと思います。この内容なら絶対納得です。


メニューには、ちゃんとシェフの名前も記されています。このホテルはその格式ばかりでなく、お料理の評判も高いようです。



どのメニューがどのお皿だったか忘れましたが、とにかく全てのお皿が超満足の味でした。わかるかなあ?わかんないよなーーー。。。









最初はやはりちゃんとしたシャンパンで乾杯しましょう!このシャンパンは(スパークリングワインではありませんぞ!)、日本でも見かけますがフランスでも高級シャンパンとして通っています。この豪華賢覧たるお食事の幕開きには最高のシャンパンです。







シャンパンがハーフボトルだったので、あっという間になくなってしまいました。次は、カシスの白を頂きます。これはプロヴァンスらしい爽やかな味わいで、お料理にもよく合います。



そんな訳で豪華な夕食と極上のベッドで休んだら、疲れた神経と体が元気一杯に回復しました。さあ、今日は待ちに待った『LE PONT DU GARD: ポン・デュ・ガール』を訪れます。

ニームからポン・デュ・ガールまでは30km位の距離なのですが、田舎道を通っていきますので、ニームからは小一時間はかかります。のんびりとした葡萄畑や途中の小さな町などを通り過ぎて行く間に、やっと『PONT DU GARD』の標識が現れます。ポン・デュ・ガールは、古代ローマ人の築いた水道橋だそうですが、昔地理(歴史?)の教科書で見た位で、その形も規模も全く想像できませんでした。のんびりとした緑溢れる小道を通って、やがてポン・デュ・ガールに到着します。



道幅は狭いですが、木々の緑が夏の太陽の直射から守ってくれます。


ポン・デュ・ガールは全くの観光地です。夏休みのせいか、やたらとドイツとアメリカの観光客が多いようです。15フラン払って駐車場に車を停め、ポン・デュ・ガールまでのんびりと歩きます。近くにはキャンプ場もあるらしく、子供たちの歓声が聞こえます。ポン・デュ・ガールまでは駐車場から歩いて10分ほどですが、谷あいから巨大な石造りの橋が目の前に忽然と現れた瞬間はやはり感動します。近づくにつれて橋の巨大さが実感として感じられてきます。とにかく、古代ローマ人がどうやってこのような巨大建造物を、しかも山間の河に渡したのかまるで不思議です。現代の機械力をもってしても、これと同じ条件の橋を作ることは困難でしょう。



最近までは、この橋の最上階を歩くことが出来たらしいのですが、現在では中階と最上階への入り口は閉鎖されていて、観光客は立ち入ることができません。それで、一番下の橋の部分を恨めしそうに行きつ戻りつする訳です。それでも、橋の通路は川面から遥かに高く、下を見たら背中がゾクゾクしてきます。さすがに、バンジー・ジャンプをする人もいません。



それでも諦められない年配の観光客は近くの丘に登って橋の全景を眺めて溜飲を下します。そして、丘への上り下りで消耗した体力をふもとのカフェで癒すのです。



このおじさんのことではありません。。。


それに反して、子供たちはまだまだ体力が有り余っているのか、ポン・デュ・ガールの下を流れる河原でひとしきり水遊びします。観光地の割には割と水も奇麗で、深みでは十分泳げます。また、カヌーで川下りをするのも一興です。カヌーからは、さぞや素晴らしい景色が楽しめるでしょうね。



さて、駐車場に戻ったらお昼が近づいてきました。次の訪問地のアヴィニヨンで美味しいランチにありつきましょう。

ポン・デュ・ガールからアヴィニヨンまでは高速道路を使うと大した時間はかかりません。ローヌ川に架かる橋が見えたらもうアヴィニヨンです。『踊ろ!踊ろ!輪になって踊ろうよ、踊ろ!踊ろ!輪になって踊ろう。。。お坊さんも来ーーーる。。。』とかなんとかの『アヴィニヨンの橋で』で有名なこの中世の都市は一時期ローマ法王の庁舎が置かれたそうですが、確かに街をぐるりと取り囲む城壁はなかなか感動ものです。でも、車が多いですねぇ。。。構わず、街の中心に向かいます。あれあれ、という間に狭い街中に入り込んでしまい、車を走らせるのに一苦労です。とにかく、中世のコンセプトの街に現代の車社会が同居している訳ですからその喧燥たるや大変なものです。ほうほうの定で街から脱出し、別の入り口からもう一度中に突入です。無茶苦茶に車を走らせている間にちょっとした駐車場を見つけました。空いているからといって小さな道に路上駐車してはいけません。絶対大型車は通らないだろうと思っているところにも、とんでもない大型のバスがくるのです。路上駐車だけは止めた方が賢明です。



苦労して車を駐車場に入れたら、直ぐ近くの広場に向かいます。何だか賑やかですねぇ。それもその筈、ちょうどアヴィニヨンでは演劇祭をやっていたのです。道理で街中が込み合っている筈です。



早速、『地球の歩き方』にあったワイン・カーヴを探しますが、なかなか見つかりません。地元の方に何回も道を聞き(答えはフランス語ですからあまり役にはたちませんでしたが)、何回も同じ通りを歩き回ったのですが一向に見つかりません。そのうち、街中に高い城壁が見えてきました。何でしょう?近づいてみますと、これが法王庁宮殿(Palais des Papes)のようです。ぞろぞろと観光客が出てきます。出てくるということはここから入れる筈だ。。。と勝手な理屈をつけて出口から中に入ります。直ぐそこは観光客用の売店になっています。そこから更に宮殿の中に階段が通じています。



The Palace of the Popes,

residence of the Supreme Pontiffs during the 14th century, is the largest Gothic palace still existing in the world. Visiting the palace takes you back in time to the splendour of the Papal court as you discover 25 rooms, courtyard, ceremonial halls, chapels and the private apartments of the Pope with its original frescoes.


降りて来る来場者をかき分けて階段を無理に上がりますと、そこに小さな秘密の小部屋があります!なんと、ワインの部屋なのですぅ!薄暗い部屋には男女2人のワイン・アドバイザーらしき方がいらして、しきりにワインを勧められます。法王庁は大変鷹揚な雰囲気らしく、ここを訪れる人々にワインを勧めるのです。さすがにテイスティングはしませんでしたが、売店でしっかり法王庁のワインを買い込みました。これは一生の宝物です!



さあて、法王庁のワインをゲットしたら『アヴィニヨンの橋』を見て次の訪問地へ行きましょう。。。と思ったのですが、どうやら方角を間違えたらしく、遂にアヴィニヨンの橋の上で踊ることはできませんでした。今夜の宿は『シャトーヌフ・ド・パプゥ』にとりましょう。先を急がねば。。。

私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。

(赤) フランス: HYPOCRAS DU PALAIS DES PAPES

Comme l'attestent les comptes de la chambre apostolique, l'hypocras apparait a plusieurs reprises sur la table des papes d'Avignon. Pour le couronnement du Pape Urbain V (6 novembre 1362), Guillaume de la Croix, bouteiller de feu le Pape Innocent Y , prepara 15 pichets de ce nectar.

Le Palais des Papes a retrouve, pour vous, les secrets de fabrication du vin d'Hypocras. Cette boisson est aromatisee de facon naturelle grace a un dosage subtil et equilibre de vin, de sucre de raisin, d'eau de rose et d'epices. Au moyen Age, on le buvait surtout en fin de repas avec des confitures ou des confiseries. Aujourd'hui, il peut se deguster comme digestif ou en aperitif, legerement frais.

POUR FAIRE UNG LOT DE BON YPOCRAS


Prenez une onches de cinamode nommee longue canelle en pippe, avec une cloche de gingembre et autant de garingal, bien estampe ensemble et, puis prenez ung livre de bon cuquere: et tout cela broyes ensamble et destrempes avec ung lot du milleur vin (...) que pourres finer et le laissir tremper ungne heure ou deux. Et puis coulles parmy ung chause par plusieurs fois tant qui soit bien cler.

Menagier de Paris

法王庁でワインを売っているとは夢にも思いませんでした。本当は、『地球の歩き方』に紹介されていた『La Cave du Bouffart』というワイン・カーヴに行きたかったのですが、散々探し回った末に閉店した後で諦めました。その代わり、この世にも珍しい法王のワインに巡り遭えたのですから人生何が幸いするか分かりませんね。

飲む前は普通のワインだと思っていたのですが、どうも特別な用途に使われるワインのようです。かなり甘い上に、ジンジャー(GINGER:しょうがの根茎)のような独特の風味があるのです。ひょっとしたら、ミサ用か何かかもしれません。ただの赤ワインだと思ってお食事と頂くと、かなりミスマッチを起こします。むしろ、食前酒か食後のお酒として飲んだら合うかもしれません。という訳で、夏の南仏旅行から持ち帰った10本余りのワインは全てなくなってしまいました。あの夏の暑い日に南仏の名所旧跡とワイナリーを巡りながらあちこちで買い込みまた飲んだワインの数々。。。秋の深まりと共に記憶からも薄れていきます。寂しい限りです。



ラクリマ・パプ(法王の涙)になってしまいました。






何気なくコルク栓を見たら、『LES COTEAUX D’AVIGNON』と書いてありました。アヴィニヨン地方のワインとは珍しいですね。恐らく、日本では殆ど見かけないのではないでしょうか?










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