シャトーヌフ デュ パプゥ・DOMAINES MOUSSET
アヴィニヨンの街中の狭い曲がりくねった道に別れを告げて、今回の旅のハイライトである『シャトーヌフ・デュ・パプゥ(長い名前なので以下”パプゥ”と書くことにします)』に向かいます。パプゥはアヴィニヨンの北20km位に位置し、広大なワイナリーが散在するワインの村として知られています。アヴィニヨンからローカルな道を暫く走っていたら、『Chateauneuf du Pape』の標識が見えてきました。案内板の大きさからすると、かなり小さい村のようです。
村の入り口にある小さなロータリーで、村の中心と反対の方向に進みます。『地球の歩き方』を読んでいたら、パプゥでのお勧めのホテルとして『Hostellerie Chateau des Fines Roches』が次のように紹介されており、そんなお城に予約なしに泊まれる筈もない。。。とは思いましたが、どんなところかという好奇心もあって立ち寄ってみることにしたのです。葡萄畑の中にあるのなら村の中心とは反対方向に当たるだろうと思って。。。
『ワイン畑(ワイン畑?葡萄畑じゃないのかな?)の中に悠然とたたずむ姿は、規模の大きさこそ違うがアヴィニヨンの法王宮殿を思わせる。かってカマルグ出身のバロンセリ公爵が住んでいた城を20数年前にレストランとしてオープン。その数年後にホテルも加わり、美味しい土地のワインと料理、豪華な城での滞在と贅沢三昧。ショッピングよりもワイン派!には十分満足できるに違いない。どの部屋からもワイン畑が見渡せる。』
アッという間に住宅地を抜けると、簡易舗装のような道が広大な葡萄畑の中を真っ直ぐに通っています。道の両側は見渡す限り青々とした葡萄畑です。たまにワイナリーでしょうか、ワイン販売の農家の家が見えます。ちょっと心は引かれたもののそのまま車を走らせます。数分も走ったでしょうか、真っ直ぐな道の正面に小高く盛り上がった丘があり、そのてっぺんに廃虚のようなお城の跡が見えます。あれ?右手の方にも小高い丘が見えてきました。丘の上にはお城が見えます。直感的にあれがそのホテルではないかと思い、行ってみることにします。道に面して巨大な石の門があります。そこから遥か離れた丘のてっぺんまで小道が続いているのです。
この門から私道が丘の上に豆粒のように見えるお城まで続いているのです。なんという規模の大きさ!
車一台がやっと通れるような細い道をゆっくりと走ります。さすがにここでは後ろからクラクションを鳴らされることもありません。途中トラクターとすれ違った他は人っ子一人出会いません。うねうねとした道を登り切ると小さな広場があり、巨大な倉庫らしきものが広場に面して建っています。その倉庫の隣に小さな門があります。表札には次の文字が輝いています。
なんと、4つ星なのです!昨夜も4つ星だったのに。。。と思いながらも門を開け、見事に手入れされた植木に沿ってホテルの入り口に向かいます。植木が途切れたところでパッと視界が開け、中世の面影を残したお城(館と言った方がいいかもしれないですけど)が目に飛び込んできます。ス、スッゴイなァ。。。と思わずため息が漏れます。広場にはテーブルが置かれています。恐らくここでディナーを頂くのでしょう!もう胸キュンです。
恐る恐る入り口のドアを開けてみます。正面に小さなフロントがあります。受付の方と目が合ってしまいました。もう引き返せません。度胸を決めて部屋が空いているかどうか聞いてみます。パプパプのパプゥ!なんとお部屋が空いているのです!パプゥ!宿泊代を聞いてみますと、これが外観に似合わずとてもリーゾナブル!もう一も二もなく今夜はここに泊まることにします。
改めてホテルの中を見回しますと、ワインを飾った部屋とか、豪華な調度品で飾られたレストランがあります。なにもかも貴族の館そのままの風情です。
棚に並んでいるのはここのワイナリーで造られたワインの数々でしょうか?
石段を上って2階に行きます。7−8部屋がありますが、どうもそれ以外に部屋が見当たりません。まるでゲストハウスのようなものです。案内された部屋に入りますと、これがまた映画に出てくるような豪華な調度品の数々。。。思わずタメ息がでます。昔の建物ですからシャワーなどはちょっと手狭なのですが、もうそんなことはどうでもよくなります。
窓を開けますと、これがまた絶景!見渡す限り一面の葡萄畑が広がっていて、遥か彼方の地平線で青空に吸い込まれていきます。久しく見なかった青い空と緑の大地です。心も体も芯からリラックスします。ふと、窓の下を見ますと幾つかのテーブルが準備されていて、真夏の陽を遮るようにパラソルが広げられています。未だディナーには早いようですが、そろそろテーブル・セッティングを始めているようです。今日は早めに宿が確保できたので、最初は『地球の歩き方』に紹介されていた村の中心にあるという『La Mere Germaine』というレストランに行こうと思っていました。ですが、こんな素晴らしい景色を見ながらのお庭でのディナーもいいなと思ってホテルで頂くことにしました。
ちなみに、次が『地球の歩き方』に紹介されていた『La Mere Germaine』です。これを読んだら誰だって行きたいと思うでしょう。。。
『アヴィニヨンの北18kmにある『法王様の葡萄園』の村は、ワインの名称としてあまりにも有名で、村自体のことは忘れられがちのようだ。この村の噴水の前に、プロヴァンスでも特に名高いラ・メール・ジェルメーヌがある。何しろ戦前から政財界の名士や文化人を多く迎えたこの店を若きシェフ、ピエール・ポメールが引き継いでからは以前にも増して活気づいている。アヴィニヨンの法王庁を遥かに望んで、ローヌ川の流れと、法王様の葡萄畑が一面に見晴らせる眺望は他に類を見ない。料理は、毎日地中海から届くあらゆる海の幸、あるいはプロヴァンスの地鶏や羊、冬には野鳥、猟の獲物も食卓に上る。。。』
ディナーまで未だ暫く時間があります。ちょっと散歩しましょう。ホテルから一段低いところに小道が通っています。片側はいろんな木々が植えられています。よくよく見ますとサクランボの木がありました。枝という枝にはサクランボがたわわに実っています。日本では宝石なみのお値段ですが、ここでは誰からも見向きもされないのか、地面には沢山のサクランボが落ちています。勿体ない!鳥になったつもりでサクランボを枝から一つ頂戴します。ちょっと拭いて口に入れますと紛れもなくサクランボの味です。でも、ちょと酸っぱいですね。野生の味です。プイと種を飛ばして今度は反対側の葡萄畑に入り込みます。
私もこんな規模の葡萄畑は始めて見ましたが、見渡す限り畝に沿って整然と植えられています。でもどうやって葡萄を摘み取るのでしょうか?とても人手で摘み取れるような半端な広さではありません。私なら無給でもワインを毎日一本飲ませて頂けるのでしたら幾らでも働きますけどね。
葡萄畑は肥沃な土壌を想像していたのですが、現実は全く違いますね。よくよく畑を見ますと、地面はまるで石ころだらけです。その石ころの間から葡萄の木が伸びている訳です。よく茂った葡萄の木の葉っぱをかき分けますと、未だ青い小さな房ですが鈴なりに葡萄をつけています。感動しますね。せっかくですからどんな味なのか葡萄を一個食べてみましょう。ガリッ。。。未だ青い葡萄の実は、酸っぱくて青梅のようです。これが有名なパプゥのワインになるのかァ。。。と感動また感動です。
葡萄の木は意外と小さく、背丈は1m位しかありません。
記念に、葡萄の木の葉を一枚頂くことにしました。形の良い葉っぱを一枚取ってみますと、青々として生命力が溢れています(日本に帰りついてチェックしてみましたら丁度押し花のようになっていました)。
今度はホテルの一画にあるワイン博物館兼試飲所兼販売所に行ってみます。
看板の向こうは普通の民家です。勝手に立ち入りしませぬように。
販売所の中には、巨大なワインの熟成樽や昔の機具などが展示されています。ワイン樽などは今でもそのまま使われているとのことでした。
それはそれとして、早速試飲してみましょう。私はこんな大きなワイナリーだろうから幾らでも試飲できるだろうと思っていたのですが、意外とつつましやかで一回の試飲ではグラスに少ししか注がれません。それに、ワインを買えば試飲は無料なのですが、試飲だけなら有料とのこと。。。ちょっとガッカリです。そんなに種類も無なかったので『シャトーヌフ・デュ・パプゥ』の彫りが入った赤・白2本のボトルを買込みました。
お店番のおじさん、もうちょっと愛想が良かったら。。。
そうこうしているうちにディナーの時間になりました。その頃までには、私の後2−3組のお客様がいらしたようです。早い方はお庭のテーブルに座ってビールなど飲まれています。さあ、私も晩餐の始まり、始まりっ。。。今夜のシェフは次の方々です(と思います)。
先ず、メニューをチェックします。真っ赤な表紙の見開きのメニューには何やら難しい名前が載っています。よく分かりませんが、一番のお勧めのコース・メニューを頂くことにします。お値段は340フランですから、そんなに高くはありません。まわりのテーブルを見ますと私のような豪華コースを頼んでいるゲストは他にはいらっしゃらないようです。。。
これが執念の思いで手に入れたメニューです。。。
どのお料理がどのお皿かよく分からなかったのですが、何しろ生涯最高と言ってもいい位の素晴らしいお料理とワイン、それにデザートでした。特に、ソースの繊細で奥行きの深い味には感動しました。これがフレンチの神髄なんですね!
お料理も最高なら、サービスも最高!たった数組しかお客さんはいなかったのに、4人位でサービスして下さるのです。翌朝はお庭のお掃除とか、フロントをされるのですけど、この時ばかりはお給仕専門になるのですね。ウーーーン、トレヴィアン!
8時過ぎから食べ始めて、コース料理を食べ終わった頃には10時近くになっていました。日の長い南仏地方でもこの時間になるとさすがに夜の帳が降りてきます。名残惜しかったのですが、引き上げることにしましょう。
朝になりました。昨夜あれだけ食べたのにもうお腹が空いています。今度は朝食です。昨夜とは違う朝食用のテーブルに案内されます。こちらも勿論お庭の中にあります。真っ白い布を広げたテーブルの上には新鮮な果物やジュース、それにパンやクッキーが乗っています。
食事も豪華なら眺めも最高ですね。強い朝の陽射しを避けながら広大な葡萄畑をめで、朝食を頂きます。もう現実から離れた夢の世界です。
夢のような時間を過ごして元気一杯リフレッシュしました。今日はこれからひまわりと並んでもう一つの南仏プロヴァンス地方の風物詩であるラベンダー畑を見にいきます。またどんな出来事が待っているのでしょうか?
[注釈: 『CHATEAUNEUF−DU−PAPE』は、正確には『シャトーヌフ・デュ・パプ』と言います。『シャトーヌフ・デュ・パプゥ』と言ったらイクラちゃんに笑われます。。。]
私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。
- (白) フランス: CHATEAU DES FINES ROCHES CHATEAUNEUF-DU-PAPE (1996)
- 特に説明はありません。
このワインはお城の中にある例のワイン試飲所で買ったものです。ずっしりと重たいのはボトルがそれだけ頑丈に出来ているからでしょうか?
このワインは腕が千切れるか!というような思いをして持ち帰ってきました。土用の丑の日に鰻の蒲焼きと一緒に頂きましたが、適度な酸味があって鰻の脂っこさがうまい具合に和らげられ、鰻共々なかなか美味しかったです。やはり、実際にワインを造っているところから直接買込んだワインですから愛着があります。記念に空きボトルは花瓶にして部屋に飾っておきましょう!
- (赤) フランス: DOMAINE FABRICE MOUSSET CHATEAUNEUF-DU-PAPE (1997)
- 特に説明はありません。
これもワイン試飲所で買ったものです。幾つか試飲してみた中で割と気に入った味でしたのでね。
- (白) フランス: DOMAINE DE NALYS CHATEAUNEUF-DU-PAPE (1998)
- 特に解説はありません(あったかもしれませんが、覚えておりません)。
このワインはディナーの時に頂いたものです。魚料理のメニューに合わせてとった白ワインです。
プロヴァンスの魚料理にはピッタリの爽やかな、それでいてちょっと酸味の効いた白でした。
せっかくなので記念にラベルをとってもらいました。でも今までそんな注文をしたお客さんがいなかったのか、まるでラベルが泣いているような格好になってしまいました。こんなことなら自分でとったのにぃ。。。
- (赤) フランス: DOMAINE DE BOIS DAUPHIN CHATEAUNEUF-DU-PAPE (1996)
- 特に説明はありません(あったかもしれませんが、覚えておりません)。
このワインはディナーの時に頂いたものです。肉料理のメニューに合わせてとった赤ワインです。
割と軽めですが、そんなにこってりとしていないプロヴァンス料理に向いています。このホテルのお料理は、一流のレストランにも引けをとらない素晴らしい味でした。ワインはそんなに高くなかったのですが、この素晴らしいお料理にも負けませんでした。
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