パリ・LA TOUR D’ARGENT
ニース空港でバッグの中のワインの瓶を別の袋に移し替えて、どうやら無事チェックインを済ませることができました。何しろ、バッグにはワインの瓶しか入っていないのに重量が15kgもあったのです。よく腕が千切れなかったものです。傍から見てもバッグを抱えてヨタヨタと歩く姿は不審に思えたことでしょう。ニース空港には国際線と国内線の2つのターミナルがあったようですが、国内線の待合室は結構こじんまりしています。ドームのような高い天井と広々としたガラス窓のおかげでとても開放感があります。外は相当な日差しで眩しいくらいです。待合室には小さなスナックがありますが、さすがにもう飲む気はしません。10分ほど遅れてパリ行きの飛行機に搭乗です。中型のジェット機ですがこの日は満席でした。
パリには、国際線が主に利用するシャルル・ド・ゴール空港と、国内線専用のオルリ空港があります。今回はパリで2泊するため、少しだけ市内に近いオルリ空港行きの飛行機を選びました。ニースからパリまでは1時間ちょっとの短いフライトですが、ちゃんと軽食と飲み物が出されます。飲みものはジュースしかないようです。食べる方はチーズとハムが挟まった丸パンのサンドイッチでしたが、結構パサついて飲み込むのに苦労します。ジュースで何とか飲み込みましたが、後でワインも出てきました。早く言ってくれればねぇ。。。ところで、私の乗った飛行機はエール・フランスでしたが、普通スチュアーデスさんがお食事の世話をするところ、この飛行機には男性の乗務員が乗り組んでいます。それもしょぼくれたおじさんではなくて、若き日のアランドロンも顔負けといったハンサムな方です。そのうちに、飛行機の中で高名な映画監督にスカウトされるかもしれません。
飛行機はパリのオルリ空港に着陸しました。国内線が利用するだけあって、飛行機から出ますと直ぐに出口です。時間が勿体無いのでタクシーでパリ市内のホテルまで行くことにします。パリでの滞在もHoliday−Innです。日本で予約しておいたので気は楽です。そんなに並ぶ間もなくタクシーに乗り込むことができました。パリは涼しいかと思っていたら猛烈な暑さです。座席に座ってホッと一息できるかと思ったら。。。できませんでした。このタクシーにはエアコンがついていないようです。運転手のお兄さんはカーラジオを鳴らし、ウインドウを開けて猛烈なスピードで高速道路を突っ走ります。まさにSpeedの再現です。ホテルのパンフレットを見せただけでしたが、殆ど迷うことなくホテルに到着します。料金も思ったより安く時間もお金も得した気分です。
ホテルはサン・ジェルマン通りの裏道に面していましたが、ここも他のHoliday−Inn同様とても居心地の良いところでした。直ぐ近くに地下鉄の駅が2つあり、パリ市内での観光にはすこぶる便利です。部屋は最上階でしたが、見晴らしはイマイチなものの清潔でいい感じです。まだ午後の早い時間です。さあ、パリ見物に出かけましょう。ホテルにはパリ市内の観光マップが用意されていて、これがとても役に立ちました。表には地図が、裏には地下鉄の路線図があり、また索引も充実しているので道に迷っても安心です。パリには何回か観光で来たことがありますので、名所・旧跡にはあまり興味がありません。その代わりに、かの有名なトゥール・ダルジャンに行ってみたいものだと思っておりましたので、万全を期してお店に行って予約しましょう。地図で見ますとホテルからトゥール・ダルジャンまではそんなに遠くはなさそうです。歩いていきましょう。
観光でパリに来たときはエッフェルタワーやルーブル美術館を忙しく回るだけのバスの旅でしたが、自分の足で歩いてみますとパリの住民になったような気分です。地下鉄の駅が分からなかったので、とりあえず北の方角に向かいます。暫く裏通りを歩いて行きますと広い通りに出ました。交差点の脇にはスーパーらしきお店が見えます。外見はあまり奇麗ではありませんが、とにかく入ってみましょう。パリ市内のスーパーには始めて入りましたが、さすがに規模は大きいですね。食料品から日常雑貨品まで何でも揃っています。お魚コーナーは特に充実しています。お惣菜のコーナーにも沢山のグルメ食品がありますね。そうだ!今夜はここでおつまみを買込み、ホテルの部屋で豪華晩餐といきましょう!とりあえず、候補となりそうなおつまみを頭に入れてお店をでます。ナンボ何でもスーパーの袋をぶら下げてトゥール・ダルジャンに行ったら予約どころか追い返されてしまうのがオチですからね。
スーパーを出てなおも歩いたのですが、なかなかトゥール・ダルジャンのあるセーヌ川岸には着きません。パリに限らず、フランスの道路という道路にはすべからく名前が付いているのですが、道路というのは線であって点ではないため、道路の名前が分かっても自分が今どこにいるのかなかなかつかめません。疲れましたね。ちょっと一休みしましょう。。。日光浴というにはあまりにも暑い午後の日差しですが、冷たいビールをググッと飲むと疲れがスーッと引いていきます。それにしても、フランスの方は昼間からビールやワインをよく飲まれますね。確か今日は平日の筈なんですけど。。。
少し休んだらまた元気が出てきました。多分、トゥール・ダルジャンまではそんなに遠くはない筈です。また歩き出したら、とある町角でギリシャのお惣菜を売っているお店を見つけました。ウインドウには美味しそうなお惣菜の数々が並んでいます。お魚系統のお惣菜もありますね。再び寄り道です。
つい、タコのマリネ、イカの詰め物、野菜のパテ、ピクルスなんかを買込んでしまいます。レストランで食べた方がよっぽど安上がりなよう。。。
お惣菜屋さんからほどなくのところにトゥール・ダルジャンがありました。外観は古びたオフィスビルのようでもあります。どこが入り口なのか迷ってしまいます。写真左側の真っ黒い扉がレストランの入り口で、通りの向こう側はトゥール・ダルジャンのグッズを売っている直営店です。この直営店では、トゥール・ダルジャンで出される自家ブランドのシャンパンやワインも売っていますので、お土産物には喜ばれるのではないかと思います。何しろ、ラベルに燦然と輝く『LA TOUR D’ARGENT PARIS』の文字は、何も解説は要りません。私もお土産用に赤を一本買込みました。さあ、どんな味だったのでしょうか?
直接お店に行って交渉したのが良かったのか、前日にもかかわらず翌日の予約を取りつけることができました。さあ、先ほどのスーパーに戻っておつまみを調達しましょう。まるでパリ住民になった気分ですね。果物も、牛乳も、ピクルスも何でも手が出ますねぇ。お魚のコーナーには『サバの薫製』が見つかりました。これは今回マルセイユやエクスやニースで探し求め、遂に見つけられなかった幻の品です。パリのスーパーで出会えるとは驚きです。でも、本当は寒い季節に作られるもので、夏の時期に売られているのは冷蔵の品のようです。ま、そんなことはどうでもいいでしょう。お惣菜のコーナーには、まるでホテル・オークラか帝国ホテルのブランドのようなお惣菜の数々がさりげなく置いてあります。とにかく、味は勿論いいのでしょうけど、デコレーションが美しいのです。ついサーモンのパテを買ってしまいました。
ホテルの部屋で、ギリシャとフレンチのお惣菜にエクスのワインで超豪華ディナーを頂いたらパリの空もとっぷりと暗くなりました。明日のトゥール・ダルジャンのランチを夢見てお休みタイムです。。。
朝になりました。今日は連泊なので恒例の朝の慌ただしい荷造りの準備はありません。考えてみれば、今回の旅行で連泊するのは始めてです。余裕のあるところで、パリの名物である朝市に行ってみましょう。パリ全体では数十ケ所もあるという朝市ですが、その中でもとりわけ有名といわれる2ケ所を回ることにしました。今日はパリ市内をあちこち移動するので地下鉄の一日パスを購入します。とにかく、パリ市内を網の目のようにカバーする地下鉄の達人になればパリはあなたのものです。一日パスはゾーンによって料金が異なりますが、普通は市内中央部をカバーする一番安いチケットで十分です。
パリの地下鉄は車両こそ新しくないものの、マルセイユと違って駅構内は結構明るい造りになっています。昔は旅行者がパリで地下鉄に乗ることはあまり勧められなかったようですが、今は何ともありません。
最初は、7号線の『Censier Daubenton』という駅の近くにある朝市に行きます。駅から出てもそれらしき朝市の光景は見られません。地図を頼りに歩いていましたらちょっとした裏通りに賑やかな商店街がありました。朝市というと、ニースのようなテント張りの露店を想像していたのですが、ここは普通の商店街です。最近日本でもはやりのスーパーの朝市のようです。お花や野菜といった定番の品でなく、普通のお店が時間を早めて売り出しているような感じなので何でも揃います。特に、お魚・ハム・チーズがお買い得ですね。通りには朝のお買い物を楽しむパリっ子達で一杯です。
お魚屋さんには活きの良さではマルセイユほどではありませんが、いろんな種類のお魚が並んでいます。フランス人も結構お魚を食べられるようですね。
そんな中にワイン屋さんもちゃんとありました。小さいながらも、さすがにいろんなワインが並んでいます。記念に一本買いたかったのですが、既にバッグはワインのボトルで占有された状態でしたのでワインの代わりに涙を飲んで諦めました。。。
続いて、地下鉄『Mabillon』駅近くにある朝市を訪ねようとしましたが、時間がなくなってきましたのでひとまずホテルに戻り着替えをしてからトゥール・ダルジャンに行くことにします。そうなんです。トゥール・ダルジャンとはそんなお店なのです。今日のパリは特に蒸し暑く、わざわざ日本から持ってきた長袖のYシャツとネクタイそれにブレザーを着用するともうドッと汗が吹き出します。扇子をバタつかせながら急いで地下鉄に乗り込んだは良かったものの、反対方向の電車に乗ってしまいました。。。どうも駅の感じが違うな。。。と思いつつ暫く乗っていましたが、ようやく間違いに気づきました。コリャイカン!慌てて電車を飛び降りるとトゥール・ダルジャンの最寄り駅である『Jussieu』方向の電車に乗り換えます。こういう時に限って乗り継ぎが悪く、目の前を電車が発車したりして。。。
ようやっと地下鉄『Jussieu』に到着しました。もう予約した時刻の5分前です。エスカレーターを脱兎の如く駆け上がり地上に出たらこれがまた超暑い!長袖のYシャツをネクタイでギュッと締め、その上にブレザーを着込んでいるもんだから、その暑いこと!更に時間がないので小走りにトゥール・ダルジャンを目指したのですが、前日と違った道のせいかなかなか着けません。10分遅れでようやくトゥール・ダルジャンの扉の前に立った時には汗ビッショリでした。ここで落ち着かねば。。。と一呼吸おいて中に入ります。ここからは未知の世界です。
入り口に受付があり、直ぐに別の方が案内されます。普通、レストランは入り口と同じフロアにテーブルがならんでいますが、トゥール・ダルジャンでは、先ずエレベーターに乗り込みます。数々の著名な人達が乗り込んだであろう小さなエレベーターに乗って6階(?)まで上がります。エレベーターのドアがパッと開きますと、そこはもう地上とは別世界です。うやうやしくダイニング・ルームの中央の席に案内されます。未だランチには少し早いせいか、席は半分ほど塞がった状態です。ダイニング・ルームは想像していたよりも狭い感じです。今回は昼のランチ・タイムだったのですが、これが夜のディナー・タイムだったらさぞや煌びやかだったでしょう!
早速メニューとワイン・リストが渡されます。メニューはお昼なので、3コースのセットメニューです。お魚かお肉のコースが選べます。トゥール・ダルジャンといえば鴨料理ですね。お昼でもちゃんと食べられます。お料理は鴨料理込みで350フランですからとてもリーゾナブルです。最初に、トゥール・ダルジャンのオリジナル・シャンパンが出されたのですが、これがブーブクリコに匹敵する美味しさ!しかも、後でレシートを見たらこのシャンパンもコース料金の中に入っているのです!問題はワインです。さすがに、世界の頂点に立つレストランだけあって、ワインリストはまるでブリタリカ百科事典のような厚みです。こんな種類のワインが本当にストックされているのだろうかと思いつつページをめくっていきます。高いものは何万フランもしますねぇ。。。何回もワイン・リストをひっくり返して見ていたら、ソムリエらしき方が見るに見かねてランチ・メニューの紙を指してくれました。なんと、1枚のメニューにお勧めのワインが2−3種類書いてあったのです。。。もう牙を抜かれた猛獣のようなものです。おとなしく、340フランのワインに決めました。
ところが、このワイン。。。凄いのです!1983年というヴィンテージもさることながら、その複雑で優雅な味わいは、そんじょそこいらで飲めるようなシロモノとは違います。とにかく、素晴らしいの一言に尽きます。お料理の味の繊細さ・奥ゆきの深さ・芸術的なまでのデコレーションなどなど、到底私の表現力では言い表せません。是非とも皆様には本物のトゥール・ダルジャンのお料理を味わって頂きたいものです。
これがメインの鴨料理です。鴨肉も最高なら付け合わせも言うことなしの美味しさです!
ランチ・メニューでも、ちゃんと創業以来の鴨料理を食べたお客さんの番号を書き込んだカードを貰うことができます。ちなみに私は89,9086番目でした。。。
セーヌ川の中州に立つノートルダム寺院を眺めながら至福の時を過ごした後は酔い覚ましを兼ねてお散歩です。でも、あまりにも美味しいワインを飲んだせいか、はたまたあまりにも暑過ぎたからか、あまり歩く気力が出ず地下鉄で凱旋門まで移動します。凱旋門からコンコルド広場に通じるシャンゼリゼ通りは人と車で溢れています。そろそろ日本が恋しくなってきた気持ちを感じつつ、パリ最後のビールを歩道の中にあるカフェで楽しみます。世界で何が起きようと、パリでは全く独立した時間が過ぎていくのでしょう。明日も、明後日も。。。
最後の散歩と思って、シャンゼリゼ通りをぶらぶら歩いて行きます。あまりの車の排気ガスに閉口して、公園の中を歩いていたらジュアリー広場に差し掛かりました。つまり、宝石店が立ち並ぶ一画です。午後の強い日差しに輝く宝石の数々を眺めながら、更に進みますと『マキシム・ド・パリ』のお店が見えてきます。
隣には、食器で有名なクリストフルのお店もあります。まさに、超一流ブランドのお店の数々です。私にはあんまり縁がないですね。。。
オペラ座付近で地下鉄の駅を探すのに歩き回り、さすがに疲れてきました。そろそろ今回の旅も終わりに近づいてきたようです。今夜もレストランへ繰り出すのは止めてホテルで残りの食料品を片付けましょう。。。
フランスを離れる日がやってきました。思えば10日前にシャルル・ドゴール空港に降り立った時は、何の知識もなく不安一杯だったのですが、どうやら無事に帰国の途につくことができました。ニースの料金所がどうなったのかとても気がかりですが、もう何もすることはできません。この10日間、美味しいワインとお料理を楽しませて下さったフランスにお礼をしつつ、飛行機は香港を目指してぐんぐん高度を上げていきます。
私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。
- (赤) フランス: LA TOUR D'ARGENT PARIS VACQUEYRAS
- 説明は多分なかったと思います。
これは、トゥール・ダルジャンでお昼のランチ・コースを頂いた後、レストランのお向かいにある直営のお店で買い込んだものです。このラベルは何にも代え難いですね。
このワインは欠番です。。。
- (赤) フランス: PERNAND ILE DES VERGELESSES (1983)
- 説明は多分なかったと思います。
トゥール・ダルジャンのランチ・コースで頂いたワインです。1983年ものながら340フランでした。これは、あの分厚いワインリストを眺めても、なかなか見つけられないほどの逸品です。
ウーーーム!絶ですねぇ。。。ニースのチーズ屋さんで頂いたボルドーの赤も凄かったけど、これもフランス・ワインの奥行きの深さを堪能する超グッドなワインです。
恐る恐る頼んだら、ちゃんとラベルを台紙にとってくれました。でも、ちょっと曲がってる。。。
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