コンスエグラ・風車





トレドを出発したのは午前10時を大分回っていました。今日の最初の訪問地はアランフェス王宮です。地図で見ますと、トレドからほんの30km位離れたところにあります。これ位の距離が一番楽ですね。トレドのパラドールから坂道を下って東の方向に車を走らせていたら、自然とアランフェスに向かうN400に入っていました。ラッキーなことです。N400もローカルな道で、走るのにはあまり神経を使いません。30分ほどゆっくりと走っていきますと、N400はN−Wと交差し、直ぐにアランフェスの町に入っていきます。やがて町の真中あたりに王宮の屋根が見えてきました。アランフェスは小さな町ですがとても緑が豊富です。道の両側にもまるで緑のアーチを作るように街路樹が続いています。そのためか、町中に入ると王宮の場所が分からなくなります。その上、あちこちに止められた路上駐車の車と、無秩序な人の往来のために運転はなかなか大変です。覚悟を決めて、とある信号のところで左折してみます。すると視界が開け、巨大な建物が姿を現しました。幸運にも、王宮に続く道に入ったようです。200mほど進み、木陰の駐車場に車を停めます。それにしても、世界的に有名な王宮なのに、観光客が少ないですね。駐車場から歩いて直ぐのところに広い庭があります。緑の芝生がよく手入れされていて、眩いばかりの日差しに映えています。どういう訳か王宮の門が閉まっています。未だ開いていないのかなあ?と何気なく掲示板を見ますと、『月曜日は休館』と出ています。。。



仕方ありませんね、一休みして引き上げることにしましょう。どこかにBARはないものかと見ますと、広場の先に風情のある緑の並木道が続いています。白樺でしょうか、高い木が枝を広げ、まるで緑のトンネルのようです。気持ち良さそうなので歩いてみます。道路はとても雑な舗装なのですがそれだけに素朴な雰囲気です。木陰に入ると結構涼しいのですが、乾燥しているせいか喉が渇きます。どこかで小鳥が『ピルル、ピールル、ピーールル、ピーーールルーーー』と鳴いています。こちらでは『セルベッソ、セールベッソ、セーールベッソ、セーーールベッソーーー』と鳴いています。。。



50mも歩かないうちに派手な色彩の看板が見えてきました。レストランを併設したBARのようです。それにしてもケバケバしい色です。ありとあらゆる看板・垂れ幕にCOCA−COLAの文字が書かれています。ちょっとスペイン的ではないのですが、緑一杯の感じなので入ってみます。ちょうどお昼の12時だったのですが、お店は未だ準備中です。でも、お願いして入れてもらいました。BARにはワインが沢山置いてあり、またケースの中にはワインにピッタリのお料理が並んでいます。ひーーーっ、ワイン飲みたし。。。ですが、これからまた長時間の運転が待っています。ここはオレンジジュースで我慢・我慢。。。



このケバケバしい赤は周囲の緑とあまりにもミスマッチだと思うのですが。。。




でも、こういう絵が白壁に描いてあるところなどは如何にもスペイン的でいいですね。。。


アランフェスから真っ直ぐにコンスエグラに向かうか、チンチョンに寄っていくか暫し迷います。チンチョンはアニス酒とニンニクが名産のひなびた小さな町だそうです。アランフェスからも15kmほどの距離ですから行けないことはありません。ですが、今夜の宿のアルマグロまでは未だ200km以上も走らなければなりません。ウーーーン、と考えて結局諦めました。ニンニクを効かせたスープやローストした仔豚をアニス酒で頂く。。。美味しそうですねぇ。。。やっぱし、行けばよかったなぁ。。。

アランフェスからN−Wに入り南下します。コンスエグラへの出口まで50kmほどでしょうか、風景はなんとなくラ・マンチャの様相を呈してきます。。。と書きたいところですが、想像していた荒涼たる風景は全く見られません。むしろ、ところどころに葡萄畑が広がって緑豊かな土地のように見えます。スペインでは道路脇の小高い丘の上に巨大な牛のモチーフが立てられているのによく出会います。どういう意味なのかは分かりませんが、牛がそれだけスペインの人達にとって重要な存在であるということなのでしょう。



大きいことは大きいのですが、板を張り合わせただけのいたって簡素な作りです。


50kmの距離とは云っても、N−Wはマドリッドからアンダルシア地方への幹線道路です。トラックも多く運転には神経を使います。その上例によって、追われつ、抜かれつ、追い越されの目まぐるしいカーチェイスが繰り広げられます。『MADRIDEJOS』という小さな町でN−Wから出てCM400に入ればコンスエグラへは4kmほどの距離です。小さな町なのですが、町中に入り込んでしまいますとなかなかCM400を見つけられません。狭い路地に入っていきますと、4−5人のおじいさん達が暇を持て余してか日陰に座り込んで通りを眺めています。どうせ暇なのでしょうからコンスエグラへの道を聞いてみましょう。車を降りて地図を見せながらCM400を指差しますと、『トレドに行くのかね?』『違いますよぉ!コンスエグラですよぉ。。。』どっちにしても同じ方向でした。首尾よくCM400に入りますと、数分走ったところで小高い丘が見えてきました。よくよく見ますと、丘のてっぺんに何やら朽ち果てたお城の廃墟が見えます。つーーーと視線をずらしますと、風車が連なっています。『おぉ!あれがドン・キホーテの風車か。。。』と勝手に決めつけてしまいます。



写真では風車は点のようにしか見えませんが、実際はもっと大きく鮮明に見えます。


コンスエグラの町に入りました。。。とは云っても、コンスエグラは丘のふもとに広がる小さな町です。とにかく丘のてっぺんまで登ればいい筈です。右折・左折は関係なく、上へ上へと登っていきます。やがて家並みが消え、丘のてっぺんに向かう小さな坂道に入りました。ゴリゴリと坂道を登っていきますと最初の風車にたどり着きます。その先にはお城の廃墟があり、更にその先に風車が連なっています。狭い坂道ですが対向する車もなく、一気に先端の風車のところにある小さな広場に辿り着きました。あたりは荒涼たる風景です。風車の建物は意外と小さく、しかも地面は石ころだらけです。昔の人はここで穀物を挽いたのでしょうけど、運搬は大変な作業ではなかったかとその苦労が偲ばれます。



それにしても、ここからの眺めは絶景です。360度見渡しても視線を遮るものがありません。東西南北どの方向を眺めても平地が広がっています。丘の上を吹き抜ける風を感じながら、暫しラ・マンチャの風景に見入ってしまいます。



時代に取り残され、あまりにも侘しい佇まいの風車に未練を感じながら坂道を降りて行きます。入り口近くの風車のところにきますと、狭いながらも展望台があります。ここにも小さな風車があるのですが、どういう訳か風車の傍に古い(殆ど廃車寸前の)トラックが止まっています。運転席には不精ヒゲを生やしたおじさんが座っています。何だろうと車を停めて降りてみますと、そのおじさんも精一杯の愛想を込めてトラックを降りてきます。風車の中を見せてもらえないかとお願いしたら、風車の中に入れてはくれましたが、お土産物を盛んにすすめます。どうやら風車の中にお店を構えて風車にまつわるお土産を売っているようです。置物とか何とかの月並みな品物だけであれば何ということもないのですが、ここには結構な本数のワインを売っていました。しかも、地元のラ・マンチャ産です。むむーーーっ、と本気になってワインを手にとってみます。おじさんは盛んにテイスティングを勧めますが、そこは丁重にお断りして赤の良さそうなのを一本買い込みます。ワインの本数はあっても、種類は赤・白・ロゼの3種類ですから選ぶのにそんなに時間はかかりません。それにしてもこのおじさん、何処で覚えたのか怪しげな日本語を連発します。日本人の観光客から習ったのでしょうか?カタコトながら一応それなりの意味になるところは大したものですがね。。。ワインを買い込むと、おじさんの方から風車の中を見ていかないかと勧められます。狭い階段を上がっていきますと2階に巨大な木の車と革製のベルトが見えます。現在では使われていないのでしょうけど、今にも動き出しそうな迫力です。



残念ながらお店とおじさんの写真を撮るのを忘れてしまいました。。。


ラ・マンチャ地方には風車で有名な場所が他にもあります。ドン・キホーテが巨人ブリアレオと見間違えて、愛馬ロシナンテに跨り、槍を小脇に突進し跳ね飛ばされたという風車はカンポ・デ・クリプターナにあるそうです。これは是非とも行かねば。。。

コンスエグラからカンポ・デ・クリプターナへは2通りの道があります。私は、一旦CM400を戻り、N−Wに入らないでそのまま20km程進んでアルカサル・デ・サン・ファンを経由し、そこからN420を4km程進んでカンポ・デ・クリプターナに至るルートを選びました。高速道路は通りませんが、午後のドライブは疲れます。ようやっと、アルカサル・デ・サン・ファンに着きました。ここにはかなり大きな駅があります。長大な貨物列車が往来しているところを見ますと、ラ・マンチャ地方の物資の集積所のような感じがします。もう一踏ん張り。。。と頑張って走っていましたら、前方の丘の上に風車が見えてきました。カンポ・デ・クリプターナに到着したようです。今度も町中を上へ上へと登っていきますが、何処まで登っても家並みが途切れることはありません。とうとう道が分からなくなり、途中で通りがかりの子供に道を聞いてみます。あっちに曲がってこっちに曲がって。。。ペラペラと教えてくれるのですが、結局最初の曲がり角しか分かりませんでした。またまた上へ上へと登って行きますと道はどんどん狭くなり、もう二度と戻れないのではないかと不安が募ります。丘の頂上近くになりましたので、アクセルを一杯にふかせてトドメの急な坂(傾斜が45度はあったかも。。。)を登ります。一気に展望が開け、丘のてっぺんの広場に着きました。有名な風車群なので、さぞや賑わっているだろうと思いきや、一組の観光客の他は人っ子一人いない荒涼たる場所です。隅っこにお店やBARらしい建物もありましたが全て閉まっています。ですが、風車だけは威風堂々と立ち並んでいます。ドン・キホーテも跳ね飛ばした風車ですが、現在では観光客にも見捨てられてしまい、建物にも風車にももはや何の生命も宿っていません。寂しい光景です。



ふと見ますと、一匹の犬が歩いてきます。お腹を空かせたのか、食べ物を求めてごみ捨て場のようなところを漁っています。こっちを振り向きました。イケマセン、視線が合ってしまいました。連日の生ハム三昧のせいか、私のお腹は極上のお肉に見えたのでしょう。どんどん近づいてきます。こんなところで犬の餌食になってはたまりません。早々に車に乗り込み退散です。。。



カンポ・デ・クリプターナから今夜の宿であるアルマグロまでは50−60km位の距離です。早くアルマグロのパラドールに着いてビールでも飲みたい気分です。一旦アルカサル・デ・サン・ファンに戻り、そこからCM3107というローカルな道に入って、『MANZANARES』という町でN−Wと交差し、更にCM4124を進めばアルマグロまではほぼ一直線です。確かに地図の上ではそうなっているのですが、ローカルな道ばかりですから事はこう簡単にはいきません。何回か間違えた上にやっとCM3107に入ります。CM3107はローカルな道ですが、道路の舗装が最高な上に車も少ないので、私にしては珍しくビュンビュン飛ばします。CM4124の田舎道を駆け抜けてアルマグロの町に着いたのは、それでも午後の5時近くでした。まあ、今日は上出来な方です。

私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。

(赤) スペイン: CALDERICO LA MANCHA (1999)

A partir de una esmerada y cuidada seleccion de uvas, este vino ha sido elaborado siguiendo las directrices tradicionales para lograr aromas francos, digno de los paladares mas exqusitos.

このワインは、コンスエグラの丘のてっぺんにある風車で買ったものです。ただのお土産用ワインの扱いで無茶苦茶安かったのですが、こうやってシゲシゲと眺むるに、スペインワインらしからぬ姿をしています。ラベルが非常に洗練されたデザインで、かつボトルの背が高いのです。まるで上品なイタリアワインの感じです。これは味の方も結構期待できるかもかも。。。

とても香りの良いワインです。グラスに注いで、しばらく揺すりながら目を覚まさせます。長い旅から目覚めたラ・マンチャの赤ワインは独特な風味をしています。とても果実の香りが強いのです。ブルーベリーに近いような感じがします。でも飲んでみますと、結構これが辛口なんです。イタリアのワインとは明らかに違います。これは本格的なお肉料理と合わせたいですね。。。

















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