アルマグロ・PARADOR DE ALMAGRO





庭園に最高の贅を尽くす

赤褐色の大地、ラ・マンチャ平原の真っ只中にあるアルマグロの町は、通り抜けるだけならうらぶれた何の特色もないところのようです。しかし、町を散策し始めると次々と豊かな文化遺産に出会い、何故こんなところにこれだけの栄華があったのか不思議に思います。先ず、中央広場を囲む白と緑に縁どられた3階建ての家々のバルコニーの見事さに心を打たれます。次に、広場のほぼ中央に面している喜劇劇場の青空天井の建物は、柱を始め、舞台、観客席の全てが見事なまでに木で統一され、しかもスペインの黄金時代の16世紀から今日までずっと使用されているということです。

パラドールはこの直ぐ近くにあります。分厚く、頑丈な木の扉から中に入ると、そこがフロントになっています。モザイク模様に石を敷き固めた床、小さな木の梁を組み合わせた天井、緑色の柱には赤を主にした極彩色で模様が描かれ、昔は修道院だったというイメージからはかけ離れています。中庭に出ますと、噴水を中央にして様々な樹が生い茂り、どこかこれと同じような風景に出会ったと頭をめぐらすと、マドリード県にあるチンチェンのパラドールを思い出します。設計者が同一人物で、しかも建てられた年代もあまり差がないそうです。しかし、こちらの方が敷地が広いので異なった趣向の中庭が14ケ所、しかもこの国ではあまり見かけない竹林が茂り、日本庭園を思わせるものもあります。水の少ない酷暑の地、ラ・マンチャでこれだけの樹木を育てるのは大変な苦労でしょう。シーズンになると、広いプールに満々と水が湛えられ(プールはないと云われたのですけどね。。。)、樹木は青々とし、まるで桃源郷のようです。アルマグロは、庭園に最高の贅を尽くしたパラドールと云えましょう。

レストランは、室内礼拝堂と隣り合い、天候の良い季節には中庭での食事が楽しめます(楽しんだもんね)。近年、日本人の来訪が急増しているとのことです。アルマグロは、12世紀初めにアルフォンソ7世に解放されて以来、スペインのカラトラバ騎士団に国境の警備が委ねられるようになりました。その後、3世紀に亘り騎士団の本拠地として、大学を始め、数々の宗教的建造物が築かれました。このパラドールも、1596年に土地の有力者であったダビデ・デ・ラ・クエバ家によって建てられたものです。中央広場の騎馬像はこの町の出身者であるディエゴ・デ・アルマグロです(そういえば大きな騎士の銅像がありましたねぇ)。彼は1532年にピサロと共にインカ帝国を征服後チリまで遠征しますが、ピサロと仲違いし彼に殺されています。


アルマグロの町に入りましたが、パラドールにはなかなか辿り着けません。所々に『PARADOR』という案内板があるのですが、途中で消えてしまいます。それでもアルマグロは小さな町なので、町中をぐるぐる回っているうちにやっとパラドールの標識を見つけました。パラドール・アルマグロは、16世紀に建てられたフランシスコ修道院を改造したものです。その当時を彷彿させるような重厚なレンガ造りの門を入りますと、中央に噴水を設えたお庭があります。お庭には既に何台かの乗用車が駐車しています。屋根付きの駐車場は庭の奥にもあるのですが、あぶれたお客さんはそのまま庭に駐車してしまうようです。この庭はなかなか風情がありますが、かなりでこぼこした石畳であるが故に奥の駐車場に車を停めますと、フロントまで荷物を引っ張っていくのが大変です。でも、そのまま庭に停めておきますと、翌朝出発するときに車の中は直射日光で地獄の暑さになってしまいます。なるべくなら屋根付き駐車場に入れた方がいいですね。



今日も一日お疲れ様です。。。


修道院を改造しただけあって、パラドールの中は窓の少ない独特の造りになっています。その代わりに建物によくマッチした照明設備が備えられていて、それがまた何とも云えない雰囲気をかもし出すのです。人によっては、近代的な明るいホテルよりも、このようなちょっと古めかしいですけど趣のあるパラドールの方が気に入られるかもしれません。



部屋に入りますと。。。真っ暗です。ただ一つだけある窓には木製の引き戸が付いています。それを開けますと、ようやく外の光が差し込んできます。窓には鉄格子があって、まるで牢獄にいるような感じです(入ったことはありませんが)。でも室内は重厚ながらとても落ち着いた内装をしています。外から差し込む光と緑の爽やかな風が心地よいですね。



窓の構造から壁の厚みがどれ位なものかお分かりでしょう。


フロントでチェックインする時に、何かの行事の一環としてパラドール特製のディナーを勧められました。メニューはよくわかりませんでしたが、他には当てもないしで申し込んであります。8時30分からの豪華ディナーを前に、パラドール内の探検とアルマグロの町の散策をしましょう。アルマグロの特産品はレースなのだそうですが、フロント脇のロビーでもレース編みのおばさんがお手製のレースを広げてお客さんを呼び込んでいました。レース編みは大変な手間がかかりますので、レース自体はそんなに安くはありません。という訳で、レースはパスして先ずパラドール内にある面白いBARを見物に行きます。



私が何故アルマグロに来たかといいますと、地球の歩き方に載っていたパラドールの中にあるBARに引かれたからなのです。何でも、そのBARは巨大なワイン樽が並ぶ昔の酒蔵を改造したものなのだそうです。ひょっとしたらワインが飲み放題なのかも。。。という期待があったればこそ、わざわざ幹線道路から外れたアルマグロにやって来たのです。BARはパラドールの奥まったところにあります。長い真っ白な壁が続く廊下の先にBARが見えます。期待に胸が高鳴ります。



BARのカウンターは何と云うこともない普通の造りです(椅子が高いのが日本人には難点ですが)。



ところがテーブル席の方を見ますと、これがまた趣があるんですね!ワイン樽なのでしょうか、室内に丸い樽のてっぺんがニョキッと突き出しています。こういうところで飲むワインの味はまた格別でしょうね。こりゃぁ、ディナーの後で寄ってみないと。。。



ひょいと下を見ますと、ワイン樽の下部がデーーーンと収まっています。つまり、ワイン樽の上部に床を張り、そこをBARにした訳です。なかなか面白い造りですね。このワイン樽は現在使われていませんので、樽から好きなだけワインを汲んで豪快に飲むという訳にはいかないようです。残念。。。



アルマグロには、『スペインで一番美しい(田舎の)広場』と云われるマヨール広場があるそうです。パラドールで地図を頂いてお散歩がてら町の散策に出掛けます。もともとアルマグロの町が小さい上に、パラドールからマヨール広場まではほんの2−3ブロックの距離しかありません。そういう訳でマヨール広場へは『まよーう』ことなく簡単に辿り着けました(ちょっと苦しいか。。。)。マヨール広場は三方を建物に囲まれた”コ”の字形の格好をしています。大まかには、向かって左手がお土産物屋さん、右手がBARとレストラン、中央は博物館(かな?)になっています。残る一辺には例の『ディエゴ・デ・アルマグロ』の像が建っているのです。もう夕方の7時ですが、広場には結構沢山の人達がいます。観光客はディナー前のお散歩、地元の人はシエスタ後の活動の時間なのでしょうか?先ず、左側のお土産物屋さんを見て回ります。



右手にあるBARは広場に並べられたテーブルにまともに西日が当たりますので、未だ椅子を積み上げて開店準備中です。


お土産物屋さんを覗いていましたら、レース屋さんが目に止まりました。ここは地球の歩き方にも掲載されているお勧めのお店です。レースだけでなく、編物道具や陶器なども売られています。ちょっと入ってみましょう。



このお店の娘さんでしょうか、単に出来上がりのレースを売るだけでなく、その場で簡単な刺繍などもしてくれます。お勧めなのは、お土産としてプレゼントする相手のイニシャルを入れてもらうことです。追加の料金はかかりませんのでお得です。相手の方にもとても喜ばれます。



このお嬢さんは地球の歩き方にも写真がでています。本人もご存知のようでした。


私のように不細工な人間にはとても及びもつきませんが、レース編みは実に細やかな手芸です。アルマグロのレースは『ボビン・レース』というのだそうですが(ボビンとは『糸巻き』のことだそうです)、小さい1本の鈎針と片手の指を使ってクリクリ編むレース編みと違い、何本ものボビンを使って編むのです。まるで精密機械のようです。器用さもさることながら、根気がなければとても続きません。私は見ているだけで目が回ってきて喉の渇きを覚えてしまいます(どういう因果関係?)。



レース屋さんの数軒先に小さな食品店がありました。蒸し暑い店内にはワインが並べられていたのですが、どうも見覚えのあるワインがあります。よくよく見ましたら、『DIEGO DE ALMAGRO』とあります。『おぉ。。。これはアルマグロのワインだったのかぁ!』と、思わず数奇な再会に感激します(実は、このワインの産地であるバルデペナスとは明日運命的な出会いをするのですが。。。)。

さて、右手のBAR・レストラン街(大げさですが)に移動します。アルマグロはかつてラ・マンチャの中心都市だったこともあり、何となくドン・キホーテを思い起こさせます。そういう看板のレストランが目に入るとつい中に入りたくなりますが、外も暑ければ中はもっと暑い。。。とても食べる雰囲気にはなれません。



どうせ暑いのなら、日差しに当たっても外のテーブルの方が未だマシです。さあ、やっとのことで『ピーーールルーーー』、『セーーールベッソーーー』が現実のものに。。。それにしても暑いっ!



マヨール広場には、『野天劇場』と呼ばれる建物があるらしいのですが、いくら探しても場所が分かりません。いい加減疲れてきましたし、ディナーの時間も近づいてきましたのでパラドールに戻ることにします。よくは分かりませんが、どうも7月にはアルマグロで演劇祭か何かが行われているようです。その一環としてパラドールでも特別のディナーが供されるようです。メニューを見てもよく分かりませんが、まずはテーブルについてみましょう。



JORNADAS GASTRONOMICAS DE CALDERON - CENAS PARADOR DE ALMAGRO DEL 6 AL 30 DE JULIO

RECITANTES PRINCIPALES

Aperitivos:
Nabos Fritos
Berenjenas con Miel de Cana
Cebollitas Rellenas de Zorza

Segundo Plato
Albondiguillas de Bacalao Cecial
Pastel de Gigote de Carnero

Plato principal
Guisado de Truchas
Carnero Verde
Pepitoria de Gallina Cebada

Platillo de Lechugas y Otras Hierbas

Postre:
Arroz con Leche y Manjar Blanco

BEBIDAS
Limonada, Frascas de Vino Blanco y Tinto
Agua Fresca de la Fuente

Infusion de hierbas, Aguardientes.


パラドール・アルマグロは14もの多様なパティオで有名ですが、今夜のディナーはレストランに隣接した中庭で頂きます。お庭の片隅には調理用のテーブルが置かれ、コックさん達が忙しくお料理を取り分けています。箱庭から見た空はやはり四角い形をしていますが、まだまだ夕暮れには間があり、青空と云ってもいいくらいです。ですが、箱庭に設けられた席ですので、もはや日差しを浴びることはありません。木々の間を通り抜ける爽やかな風を感じつつ、豪華パラドールのディナーが始まります!



さあて、ワインは?勿論飲まなくっちゃぁ。。。私はワインは別オーダーだと思ったのですが、どうやらハウスワインがメニューに含まれているようです。『赤・白、どっちになさいますか?』と聞かれますが、迷わず『両方!』と答えます。どうせ、小さなデキャンタボトルに入ってつつましやかにお出ましになるのであろう。。。と思っていましたら、これが結構デカボトル。。。こんなに飲めるかなぁ。。。最初は小さな鉄の鍋に入ったお料理です。一の膳でしょうか?なかなか凝っていますねぇ。。。



ワインのボトルが結構大きいのがお分かりでしょう。。。


コースメニューですから、後から後からお料理が出てきます。悲しいかな、どれがどれだかサッパリ分かりましぇん。。。



アルマグロ辺りには未だイスラムの影響は色濃く見られませんが、中には興味深いお皿もあります。これなんか、スペイン的と云うよりは日本的と云った方が当たっています。こんな内陸部にありながら、鮭の切り身なんかもお料理の素材として使われているのです。味付けも結構マイルドで日本人の口に合います。



あまりにお料理が美味しかったもので、赤・白のワインをグビグビ飲んでいますと、あっと云う間に両方の瓶が空になってしまいました。もうそろそろ満ち足りた気分だったのですが、いつもの無鉄砲さで『もう一本下さいな!』とお願いしたら、出すには出してくれたのですが、その瓶がやけに大きい。。。最初の瓶の1.5倍はありそう。。。そ、そんなに飲めないよぉ!と言っても後の祭り。。。このワイン、『Limonada, Frascas de Vino』という名前らしいのですが、そのお味はともかくとしてドドーーーンと目の前に大瓶が置かれると一気に飲む意欲を無くしてしまいます。普通なら、大きいサイズのボトルを最初に出して、2番目はちょっと小ぶりのボトルを出すでしょうに。。。



左側の空き瓶が飲んでしまった最初のボトル。右側のひときわ巨大なボトルが追加で出されたもの。違いが分かるでしょう。。。
(それでも、2番目のボトルも結構飲んでますねぇ。。。)


さすがに追加の(3本目の)ボトルは飲み干せず、かといってデキャンタボトルであれば部屋に持ち帰る訳にもいかず、勿体ないのですがギブアップ。。。で、デザートが出てきた頃には完全にいい気分になっていました。あのデザートは何でしたっけね?



これ、なーーーに?


最後にトドメの食後酒とコーヒーです。



これ何のお酒だったかなぁ?


ゆったりとディナーを頂いている間に夜の帳が降りてきました。お客さんも大分少なくなってきたようです。そろそろ部屋に戻りましょう。。。あ、BARは?



翌朝は何時ものように旺盛な食欲が戻ってきます。礼拝堂の後を食堂にしたような、荘厳な部屋で朝食を頂きます。いいのでしょうか、質素を旨とする修道院の礼拝堂でこんな豪華な食事を頂いて。。。あ、また生ハム。。。



生ハムは最初に取りますから上に置いたお料理の底になって見えません。。。でも、何となく野菜の比率が高くなったのは気のせいか。。。










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