プロローグ





一昨年のプロヴァンス、昨年のスペインに引き続き、今年も同僚の顰蹙(ひんしゅく)を買いつつ、肩身の狭い思いをしながらも、夏休みにはチョト早い7月11日から25日まで、まるまる2週間のイタリア旅行に出掛けました。何故、今回イタリアを選んだのかにつきましては色々と理由があるのですが、今年がイタリア年ということもあって、wine&dineの様々な催しに啓発されたこともありますし、あるいはフェラーリの聖地に詣でたいとの思いもありました。もっと単純にいえば、私がワインを飲んだ本数の多い国の順番に従ったということなんですけど。ま、前置きはどうでもいいのですが、早速イタリアWine&Dineの旅を始めることにしましょうか。。。

夏の旅行も3年目となりますと、いろいろと準備のコツがつかめてきて要領がよくなってきます。最初にすべきことは?そうです!個人旅行は先ずリーゾナブルな航空券をゲットしなければ何事も始まりません。リーゾナブルとは、お値段が安いこと(つまり格安チケット)、それに特典が多いこと(例えばルート限定にしろイタリア国内が飛行機で何箇所か回れるとか)です。今年は例年よりも出足良く、3月に入ってからこの基準を満たしたイタリアへの航空券をゲットすべく、例によってHISさんのHPを毎日チェック・チェックです。夏の旅行の一番の問題は、夏休みピーク料金の山を如何に外すかにあります。経験的に申しますと、7月8日位までは格安、14日位までは私の予算の許容限度内、それ以降は急激に値段が上がって私には殆ど手が出ません。特に今年はイタリア年ということもあって、イタリア観光の人達も増える筈です。『先んずれば人を制す』ではありませんが、アタックは早いのに越したことはありません。HPのチェックの日々は続きます。

そうこうしているうちに、遂にHISさんのHPに格好のチケットが出現しました!アリタリア航空のチケットで、イタリア国内5都市を飛行機で周遊可能というものです。しかも、お値段は16万円を切る安さ!願ったり叶ったりで、これ以上のチケットが出るとは思えません。早速、HISさんに予約の電話を入れます。HPに掲載されたチケットは、HISさんのインターネット受付専用の窓口に予約を入れるのが普通なのですが、私は敢えて新宿の本社に電話することにしています。理由は、HISさんでは最初にお客さんとコンタクトした人が最後までそのお客さんの面倒を見るという仕組みになっていますので、チケットを購入した後で引き続いてホテルとか列車とかの面倒を見てもらうのに都合がいいからです。それと、チケットの予約を入れる際に沢山の社員がいる本社ですと、誰が電話をとってあとあとまで面倒を見て頂くかにちょっとした賭けの要素があってワクワクするのです。私のように我儘でコロコロとスケジュールを変えるようなお客さんに当たると係りの人も大変でしょうけど、お客の立場に立つとやはり最後まで親身になって面倒を見て下さる方に当たると充実した旅行ができるというものです。私に当たった不運な人は、一昨年は入社したての男の子、昨年はベテランの女性でした。もし、どちらかの方が私の電話をとられたとしたら、絶対に私を担当する気にはならないでしょう。今年は?ドキドキしますね!『あのぉ、HPを見たんですけど、アリタリア航空のチケットを予約したいのですが。。。』、『有難うございます。何日のご出発でいらっしゃいますかぁ?』。電話の向こうではチャーミングな声が聞こえます。どうやら若い女性のようです。お気の毒に。。。

チケットのチェックに加えて、イタリア通の個人のHPのチェックも欠かせません。インターネットが今程普及していなかった頃は、現地の情報を知るのに『地球の歩き方』が唯一の情報源でした。今でも『地球の歩き方』は大事な情報源ですが、これとイタリア通の個人のHPの情報を組み合わせると鬼に金棒になります。これは単に情報量が倍増するという意味だけではなくて、お互いの情報の正確性を高めるのに役立つのです。ガイド本に書かれた内容は、更新のタイミングのズレからどうしても実際と差異が生じてしまいます。ガイド本で紹介されていたレストランに行ってみたら閉店していたとか、美術館や博物館の開館時間が変更されていたために中に入れなかった等々。個人旅行の限られた日程ではやり直しがきかない場合が多いので、ガイド本の情報をベースにしながらも、個人のHPで相互チェックをするのが後々悔しい思いをしないために重要なことです。

交通手段をどうするかも大事なポイントです。一昨年・昨年はレンタカーを主体に回ったのですが、今回のイタリア旅行では日程が詰まっていることと、あまり辺鄙なところには行かないことから、短・中距離は列車で、長距離は飛行機で移動することにしました。フランスではTGVでの豪華な旅を楽しみましたが、イタリアは鉄道の国とはいっても始めてのことなので不安があります。ガイド本にも列車の利用方法は書いてはあるのですが、イマイチ実践的ではありません。私がチェックしたHPの中で参考になったのは、イタリア国鉄時刻表でした。イタリアの鉄道は大半が国鉄の路線らしいので、このHPで紹介されているルート検索機能(イタリア国鉄のHPにリンクしているらしい)を使えば大抵間に合います。勿論、旅行会社に行けば時刻表を見せてもらえますが、その場でどのルートのどの列車にしようかと考えていては効率が良くありません。ボローニャからイモラまでのローカルな区間では列車がどれ位の間隔で動いているのか、あるいはどれ位の時間を要するのかが即座に分かります。もっとも、このHPを開けると軽快なバックミュージックが流れますから、くれぐれも会社ではご覧にならないように。。。(←特に勤務時間内はね!)

列車を利用する場合、チケットをどうするか悩ましい問題です。日程・ルートが事前に確定していれば、日本から予約を入れた上で代金を払い込んでおくのが一番確実で手間もかかりません。私の場合は、フィレンツェからナポリまでの移動はスケジュールが確定していましたので、HISさんを経由してチケットを予約しておきました。その他のルートはスケジュールは決まっていたものの、短距離の区間が多く、列車を予約するまでには至りません。そこで、HISさんと相談の上、イタリア国内のみ通用するイタリア・レイルカードを購入しました。これにはいろいろな種類がありますが、私の場合は4日間有効なパスで、自分の乗車する日を4つの空欄に順に書き込むだけで使えるわけです。但し、パスを使用する前に駅の窓口に行き、係りの人にパスポートを提示した上で、確認のスタンプを押してもらわないといけません。ルンルン気分で観光していますと、ついこの手続きを忘れてしまいますので注意が必要です。ちなみに、イタリアでは日本と違って駅の改札口がありません。その代わり、普通のチケットであればホームの手前にある黄色い箱にチケットを突っ込んで刻印しなければなりません。これを忘れると不正乗車と見なされますのでご用心。。。

日本で購入するパスの値段は、取り扱う旅行会社とか為替レートの違いによって多少差があります。ですが、余程の長距離区間に乗車しない限り、現地で購入するチケットの2−3倍の値段と思った方が良いでしょう。私は4日間の1等車のパスで4万円弱のお値段でしたが、実際は4日分を合計してもパスのお値段の半分も乗車していないと思います。チケットを購入した後でこのことに気が付き、若干の後悔はあったのですが、実際に列車で旅行してみますと日本でパスを買ったのは大正解でした。それも2等車でなく、1等車にしたことが。。。



パスを使用する前に、利用開始日・終了日・パスポート番号・氏名を記入して駅の窓口に行き、確認のスタンプを押してもらいます。
実際に乗車する時に、パスの左下のマス内に乗車する日を書き入れます。これを忘れると高額の罰金が科せられるそうです。


さて、今回はどういうルートで回りましょうかね?例によって『地球の歩き方』を拾い読みしながら、興味を引いたところに付箋をつけていきます。イタリアは15年ほど前に旅行したことがあるのですが、ヨーロッパをバスで回る安いツアーだったもので、月並みな観光ルートを忙しくかつ経済的に回り、wine&dineに関しては何にも記憶に残らないイマイチの旅でした。しかもイタリアを回っていた時はクリスマス・シーズンでしたので、名だたる美術館・博物館の類は殆ど閉まっていて、折角の芸術品にもお目にかかれずじまい。。。そこで、今回は全てをリセットして計画を立てることにします。先ず、食べたいものから場所を選びます。元祖カルパッチョのお店であるヴェネチアのハリーズ・バーには是非行きたいですね。ここではヴェネチア名物の蜘蛛蟹も食べれる筈です。パルマの生ハムとパルメジャーノ・レジャーノも魅力です。これはやはり現地で頂かないとイケマセン。ピザとスパゲッティはやはり本場のナポリで食したいものです。とりわけ、マルゲリータ・ピザ発祥のお店のブランディは絶対です。あと、NHKのBSチャンネルで5月頃に放送されたイタリア紀行の最初に紹介されたパレルモ市場の茹蛸(ゆでだこ)とアランチーノも外せません。次に、前回入れなかった美術館にも行きたいですね。ルネサンスの都といえばフィレンツェです。アカデミア美術館の『ダヴィデ像』、ウフィツィ美術館の『ヴィーナスの誕生』は絶対です。ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の修道院にあるダ・ヴィンチの『最後の晩餐』も見逃せません。あとは。。。おっと、F1の聖地巡りを忘れていました。フェラーリの工場があるマラネッロ、サンマリノ・グランプリが開催され、アイルトン・セナ殉教のサーキットでもあるイモラです。ついでに、ヨーロッパの超高級避暑地であるコモ湖も。。。ポンペイ最後の日は?カプリ島で泳ぎたいっ!あーーーっ、もうルートを決めるのが大変ですぅ。。。

HISの担当の方との何回かの電話のやりとりと面談で二転三転はしましたが、今回は早くから準備していたせいか、6月の始めには全てのルートと日程表が次のように確定しました。

日付       出発地    移動手段 経由地     移動手段 最終目的地
======== ====== ==== ======= ==== ======
7月11日(水) 成田     飛行機  ミラノ     飛行機  ヴェネチア
  12日(木) ヴェネチア  列車                ボローニャ
  13日(金) ボローニャ  列車   モデナ/イモラ 列車   パロマ
  14日(土) パロマ    列車   ミラノ     列車   コモ
  15日(日) コモ     列車                フィレンツェ
  16日(月)                          フィレンツェ
  17日(火) フィレンツェ 列車   ナポリ     船    カプリ島
  18日(水)                          カプリ島
  19日(木) カプリ島   船                 ナポリ
  20日(金) ナポリ    列車   ポンペイ    列車   ナポリ
  21日(土) ナポリ    飛行機               パレルモ
  22日(日) パレルモ   飛行機               ミラノ
  23日(月)                          ミラノ
  24日(火) ミラノ    飛行機               機中泊
  25日(水) 成田着


今回、ホテルは幾つかの方法で予約したのですが、始めての試みとしてインターネットでの予約もやってみました。インターネットでの予約は自宅でも簡単に出来て便利なのですが、イマイチ不安なのは予約したホテルが本当にHPで紹介された内容と合っているか、実際に行ってみるまでは確かめられないことです。ガイド本などにも載っているホテルであればそれなりに安心なのですが、HPの情報だけでは確実ではありません。今回はカプリ島に2泊することにしたのですが、ガイド本にもHISさんのリストにも目ぼしいホテルが見当たりません。そんな中で、カプリのホテルを紹介したHPの中になかなかグーなホテルを見つけました(ここをご覧下さい)。4つ星でありながらお値段は格安、しかもビーチまで8メートルというのが売り文句です。曰く、『The hotel is just 8 metres (not 8 Km) from the sea shore』。カプリ島へは丁度旅の折り返し点となる7月17日と18日に行くことにしていましたので、ビーチで一日のんびりしようと、多少の不安は抱きつつもインターネットで自宅から予約を入れました。すると、直ぐに返事が来て、『6月17日/18日の予約を受け付けました。。。』とのこと。。。あれっ、6月じゃなくて7月だよん!慌てて確認のメールを入れます。『6月17日/18日でなく、7月17日/18日なんですけど。。。』。またまた返事が届きます。『O.K.7月17日/18日を予約しました!』。それはいいのですけど、6月17日/18日はちゃんと取り消してくれたのだろうなぁ。。。心配になっていると、6月17日/18日の予約のメールを参照して、『部屋は海向きがいいですか?』との問い合わせです。もう完全にゴッチャニなっている様子。。。

最初に予約が受け付けられた時点でクレジット・カードの番号を伝えてありますので、このままいくと6月17日/18日の分の宿泊代を請求されかねません。これは大変と、直接ホテルに国際電話を入れることにします。イタリア語だったらどうしよう。。。幸いにも、カタコトながら英語が通じました。どうやら私の杞憂だったらしく、6月の予約はちゃんと取り消されていました。ホッ。。。ちなみに、カプリ島のホテルに着いてフロントの係りの人に名前を告げましたら、『あーーーら、あのe−メールのお客さんね!』と言われてしまいました。私の度重なるe−メールとはるばる日本からの電話がホテルの関係者の間で話題になっていたのでしょう。おーーー、恥ずかしい。。。

旅の準備の最後の難関は上司から2週間の休暇の許可を頂くことです。昨年は2週間に一日足りない日程でしたので、『1週間チョット休ませて下さい』と言っておいて、ハプニングで1日帰国が延び、結局まるまる2週間もの長期休暇をとってしまいました。今年は最初から2週間の予定でしたので上司にもなかなか言いにくいところです。HISさんに旅行代金を振り込む直前になって、会社のメールを使ってさりげなく上司に2週間の休暇を申請します。イタリア旅行につき、連絡不可の添え書きを付けて。。。暫く音沙汰がなくヒヤリとしましたが、たまたま廊下ですれ違った時に『おい、休暇先にカタカナの国名が書いてあったな。。。』。これで休暇は承認されました!わーーーい、と会社の同僚・友人・知人にイタリア旅行に行く旨のメールを打ちまくります。私としては単なるお知らせのつもりだったのですが、メールを受け取った人は殆ど例外なく、『お土産にあれ買ってきてね!』、『免税店でこれ買ってきてね!』。。。余計なメールを出したばかりに山のような買い物リストになってしまいましたぁ。。。

さて、旅行の準備も完璧に出来上がり、明日は出発という日の午後になって電話が鳴りました。『もしもし、HISですが、アリタリア航空の出発便が4時間ほど遅れる見込みになりましたのでご連絡致します』。『えーーーっ、4時間も遅れたらミラノからヴェネチアへの乗り換えはどうなるのですかぁ?』、『大丈夫ですぅ、ミラノからヴェネチアまでは代行バスでご案内することになっております』。当初の予定では、成田を12時30分に出発してミラノに18時前に到着し、そこからベネチア行きの国内線に乗り換えることになっていました。出発が4時間も遅れてはミラノに着くのは夜中になってしまいます。とすると、バスで行ってもヴェネチアには朝方着くかも。。。ひよーーーっ、でもどうしようもありません。成るように成るさと気持ちを切り替えて、出発の日は万一のことを考えて指定された時刻よりもちょっと早めに成田空港に着きました。空港のカウンターで出発の手続きをしますと、『飛行機は6時間遅れの見込みですぅ。。。』とのこと。出発までどうして時間を潰そうかと思っていましたら、チケットと一緒に空港内のレストランで使えるアリタリア航空のお食事クーポン券を頂きました。これは有難く使わねばと、暇潰しにあちこちのレストランを見て回ります。結局、最後の日本食ということで鰻丼と冷やしうどんのセットを頂くことにします。勿論、冷たいビールも。。。



この写真の意味を説明するのにえらく時間がかかった。。。


結局、18時30分の出発ということになり、待合室のゲートから駐機場の飛行機までバスに乗って移動します。先々不安は残りますが、気分はもう、マンジャーレ・カンターレ・アモーレ(は無し)!です。



アリタリア航空には初めて乗りますが、緑と赤のカラフルなマークはとてもお洒落で、旅の気分をいやがおうにも高揚させます。



昨年、エール・フランスに乗った時は本場フランスのワインを頂くのが楽しみでした。今回もフランスに負けず劣らずワインの国として知られるイタリアのアリタリア航空です。きっと沢山のワインが飲めるだろうと、席に着くなりスチュアーデスのお姉さん(お兄さんもいる。。。)の飲み物のサービスを今や遅しと待ちます。機内は日本人の団体ツアー客で満員の盛況です。なかなか私の席までは回ってきませんね。おっ、来た来た!おや、お食事も一緒ですね。和食、洋食?勿論、洋食を選びます。洋食の方がワインに合いますからね。飲み物はどれにしまひょうかね?ここはやっぱし、スプマンテでしょう!でも直ぐに飲んでしまいそうですから白ワインも一緒にね。。。では、スプマンテの栓を開けませう。おっと、落ち着いて落ち着いて。まだ旅は始まったばかりです。こんなところでスプマンテを吹きこぼしてシャツやズボンを汚す訳にはいきません。慎重に栓を抜いてプラスチックのグラスにドボドボ。。。シュワッチ!おお、先ずは旅の前途を祝して乾杯っ!ふーーーむ、イマイチ冷えが足りませんねぇ。。。続いて白ワインを開けます。ラベルから判断しますと、これはラツィオ州産のワインのようです。あっさりしていますが、なかなかに美味しいです。



COLLI ALBANI
DENOMINAZIONE DI ORIGINE CONTROLLATA

Ottenuto da uve D.O.C. provenienti dalle famose colline dei Castelli Romani, naturale cornice di Roma. Colore giallo paglierino dal profumo intenso e floreale, gusto fresco e fruttato. Ideale come aperitivo, con antipasti, carni leggere e pesce.

This delicious wine is made from specially selected grapes grown on the volcanic slopes of the Castelli Romani hills, south of Roma. It is rich and complex with a lingering aromatic finish. Perfect as an aperitive and ideal with fish, pasta and chicken dishes. Taste and enjoy one of the true treasures of ancient Roman culture.


のんびりとワインを楽しんでばかりはいられません。お食事も食べないと片付けられてしまいます。アリタリア航空では機内食のメニューを用意してないためお料理の名前はわかりませんが、どれもワインに良く合うものばかりです。豪勢に生ハムからいきます。ア、ムッ。。。うーーー、この美味しさはたまりませんね!続いてパスタです。トマトソースがよくからまってワインとの相性は抜群ですぅ。機内食は成田の工場で作られたのでしょうけど、どうみても日本的でないところが不思議です。食材もイタリアから取り寄せているのでしょうか?



お食事が終わっていないのに、ワインの方が先になくなってしまいました。赤ワイン下さいっ!



成田を発って12時間ほどで飛行機はミラノ・マルペンサ空港に着陸しました。時計は真夜中の12時近くを指しています。これからどうなるかなぁ。。。と、ワインの心地よい酔いも覚めて飛行機を降り立ちますと、出口にはアリタリア航空の係員が待ち構えています。『お名前は?』と訊かれ、『では、バッゲージクレームの出口のところで待っていて下さい』とのこと。何とかなりそうですね。気を取り直して空港内を見渡しますと、さすがにマルペンサ空港はミラノの表玄関ですね。真新しい垢抜けたデザインのモダンな空港です。でも、待合室とか通路には人影が殆ど見当たりません。我々のために空港を開けてくれているようなものです。おかげで入国審査も税関もスムースに抜けられました。ちなみに、イタリアの入国審査はパスポートを簡単にチェックするだけで、スタンプも何も押しません。さて、首尾よく手荷物を受け取ってバッゲージ・クレームの出口に行きますと、何組かのグループが集まっています。ローマとかパレルモとかに行く予定だった乗客はミラノに一泊せざるをえないのでしょうけど、フィレンツェとかヴェネチア組はアリタリア航空が用意したバスに乗って目的地まで行くようです。但し、これはある程度まとまった人数がいればの話で、私はたまたま日航のツアーか何かのグループが乗り継ぎでヴェネチアに行くことになっていたので便乗させてもらえたようです。全部で20人ほどのヴェネチア組が集まると、案内役のお姉さんが旗を掲げてバスまで引率して行きます。バスは大型の観光バスで、なかなか乗り心地が良さそうです。『ハーーーイ、荷物はそこに置いて早く乗って下さーーーい!』。私は自分の荷物が他のバスに積み込まれはしないかと心配で最後まで見届けます。ついでに、写真を一枚。。。パチョリ!『お客さん、お願いですから早くバスに乗って下さい!』。



ほら、早く乗って乗って!


こんなことでもなければ、深夜の高速道路をバスで走るなんて経験はできません。ヴェネチアまでは3時間ちょっとらしいのですが、眠気も何も起こらなくて道路の両側に広がる真夜中の景色を眺めます。他の乗客が疲れで寝込んでいれば静寂なバスの旅となったのでしょうけど、ミラノから乗り込んでこられたツアーの添乗員(現地で結婚され、日本人のツアー・ガイドをなさっているらしい)の方が仕事熱心というか、何と言うか、バスが動き出した途端にツアーの乗客に向かって(当然私にも聞こえるのですが)、イタリア観光の注意点を長々と、しかも微に入り細にわたってお話されるのです。しかも、マイクを使って。。。ガイドさんのお話によると、日本からの観光客はイタリアだけでなくヨーロッパの至る所で事件に巻き込まれているのだそうです。貴重品の管理の仕方から始まって、通りの歩き方、バッグを引ったくられた時の対応等はまだしも、チップのやり方、飲み水の注意点、お金の種類などなど。。。最初は参考になる点も多かったのでフンフンと2時間以上も聞き続けていたのですが、さすがにウンザリしてきます。ちょうどタイミング良く、バスの運転手さんが休息をとるというので、バスはとあるドライブインに入りました。窮屈な飛行機の座席に長いこと座った後でのバスの旅も疲れます。やれやれです。ウーーーンと思いっきり背伸びをします。



夜中の3時位ですからドライブインも閑散としています。15分ほどの短い停車時間ですからさすがに食べる余裕はありませんが、ちょっとしたお買い物はできます。ツアーの方々はガイドさんから散々脅かされたせいか、殆ど全員の方が2リットル入りのお水を買い込んでおられます。私もお店を覗いてみます。さすがにワインの国イタリアですね。ドライブインとはいっても沢山のワインが並んでいます。2000年のフェラーリF1完全優勝記念のスプマンテもあります。よっぽど買っていこうかと思いましたが、これから先のことを考えますと余計な荷物は持てません。泣く泣く諦めてバスに戻ります。このバスの運転手さんはなかなか慎重派らしく、普通ならミラノからヴェネチアまで3時間位で走るところ、4時間以上をかけてやっとヴェネチアに到着しました。ヴェネチアの市街から中心部の島までは長い海上橋を渡っていきます。まだ朝の4時を過ぎた頃ですので、あたりは真っ暗です。淡い照明に照らされた橋をバスで渡っていますと、これからのことが思いやられます。やがてバスはヴェネチアの表玄関であるローマ広場に着きました。昼間には車で混雑するであろう広場には、私たちのバスを除いて車は見当たりません。そりゃそうでしょう、早朝4時に観光に来る人なんかいませんものね。ひょっとしてここからホテルまでのボートが用意してあったりして。。。などという淡い期待はいとも簡単に打ち破られました。『さあ、個人の方はここでお別れです』とツアーのガイドさんが非情にもおっしゃいます。当然ですね。バスの荷物室からスーツケースを引き取り、ボートの乗り場を探します。ガイド本によれば、水上バスは深夜の時間帯は動きませんが、水上タクシーなら電話で呼び出せるそうです。船着場に行ってみましたが、ボートは並んでいたものの、あたりには人っ子一人いません。成田でもそんなに両替してこなかったし、例え水上タクシーを呼べたとしても到底料金を払えるほどの手持ちはありません。どうしようかな。。。とあたりを見回していましたら、女の子がスーツケースを引きずって歩いてきます。どうやら同じバスに乗っていた個人の旅行客のようです。

たまたま明かりのついていた近くのホテルに行って従業員の方に訊いてみますと、水上バスの船着場に行けばもう直ぐ始発が出るとのこと。さきほどの女の子に声を掛けて船着場で待つことにします。時刻表を見ますと始発は5時10分に出るようです。30分位待たないといけませんが、仕方ありません。何だか徹夜のカラオケを終えて、身も心もボロボロになって地下鉄の始発を待つような気分です。やがて一隻の水上バスが桟橋に横着けになりました。時刻表に出ていた目指すホテルまでの運行番号と水上ボートに表示してあった番号をしっかり見比べ、なおかつ2−3人の乗客に確認して水上バスに乗り込みます。あたりはまだ真っ暗です。



チケットはどこで買うのでしょうね?本当は窓口か販売機で買うらしいのですが、早朝ということもあってどこも開いていません。そのうちに車掌さん(?)が乗ってきました。チケット下さいと言いますと、6000リラのチケットを売ってくれました。400円位のものですかね。改めて考えてみますと、もしもアリタリア航空の飛行機が遅れることなくミラノに着いていたら、ヴェネチアの空港に着くのは夜の9時過ぎだった筈。それからバスかボートを乗り継いでローマ広場まで来るのも一苦労です。あるいは、飛行機の遅れが3時間位だったら。。。恐らくローマ広場には水上バスの定期便が終わった頃で、水上タクシーを呼ぶこともできず、もんもんと夜の明けるのを待たなければならなかったことでしょう。6時間という遅れ、それにバスの運転手さんの慎重な運転が待ち時間を最小に抑えてくれたのですね。感謝しなくっちゃ!



そのうちに乗客も大分乗り込み、始発便は桟橋を離れました。私の目指すホテルはサンマルコ広場のひとつ手前の停留所の傍にあるのですが、ローマ広場からは結構な距離です。水上バスが停留所に止まる度に路線図と見比べます。それでも心配で、隣の座席に座った人の良さそうなおじさんに確認します。『ホテルまでは幾つ位の停留所がありますかね?』。おじさんは指を追って『5つ目だよ』。なんだ近いじゃん!5つ目の停留所が近づきますと、おじさんはかたわらの男の人を指差して、『彼も降りるから一緒について行きなさい。。。』。何という親切な人なんでしょう!地獄に仏とはこのことです。水上バスは5つ目の停留所の桟橋に横付けになりました。さきほどの男の人が先に下りていきます。でも、一緒に乗った女の子はどうもこの停留所ではないと言うのです。どうしようと思って、車掌さんに訊いてみます。車掌さんは首を振って、ここではないとのジェスチャーをしています。先に降りた男の人はしきりにおいでおいでしています。どうしよう。。。と思いましたが、急に不安になって下船を思い止まります。水上バスは次の停留所を目指して桟橋を離れていきました。さっき停留所を訊ねたおじさんを見ますと下を向いて新聞を読んでいます。もう一度路線図を確認すると、さっきの停留所とホテルは随分と離れています。平坦な道なら大したことはないでしょうが、ヴェネチアのような島が入り組んだアップダウンの激しいところでは、とてもホテルまで歩けるとは思えません。してみると、あの二人組みは何だったのかと勘ぐりたくもなります。危ないところでした。水上バスは島の突端に近づき、女の子は私の降りるひとつ手前の停留所で無事船を降りていきました。島に3泊するということでしたので、飛行機の遅れのリカバリーは充分可能でしょう。それに引き換え、私は。。。



やっと夜が明けてきました。


ホテルは水上バスの停留所からほんの10歩ほど歩いたところにありました。早朝のこととて入口のドアも閉まっています。でも、呼び鈴を押しますとボーイさんがドアを開けてくれました。やれやれです。受け付けにはちゃんと係りの人がいて、応対してくれます。どうやらHISさんからホテルへの到着の遅れの連絡が伝わっていたようです。でも、もう時刻は6時前ですからこれから眠るわけにもいかず、何のためにホテルを予約したのか分かりません。おまけに、このホテルは結構格が高くて一泊4万円もするというのに。。。



通された部屋はアンティークな雰囲気のなかなかにグーな感じでした。何はともあれ、先ずはお風呂です。お風呂から出て服を着替えますと気分がスッキリします。もう、30時間位起きていることになりますのでさすがに疲労困憊です。でも、ここでちょっとでも寝たら観光の時間がなくなります。ふかふかのベッドを恨めしげに眺めながら、朝食を食べにレストランに下りて行きます。レストランは建物の中にあるのですが、朝食はテラスに並べられたテーブルで摂ります。ホテルは大運河に面して建っていますので、テラスからの眺めは最高です。頭はぼんやりしているものの、新鮮なトマトジュースとイタリアで最初のカプチーノの味は格別です。ふーーーっ、これからどうしましょうかね。。。










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