パルマ・PARIZZI RISTORANTE





ボローニャ駅に着いたのは5時を大分回っていました。ホテルに預けておいた荷物を受け取り、車掌さんの言いつけに従って駅の窓口でパスに確認のハンコを押してもらいます。金曜日の夕方ということもあってか、窓口には長蛇の列が出来ています。私はイタリア語なんか話せませんので、パスとパスポートを握り締め、駅員さんから何を言われても即座に対応出来るように準備して順番が来るのを待ちます。ボローニャの夕暮れは蒸し暑く、列に並んでいるだけで汗が噴出してきます。あっ、そういえば、明日のパルマからコモへの指定席もとらなくっちゃ。。。と思い出し、急いで予約シートを取り出し書き込もうとしましたが、荷物とパスで両手は塞がれ、その上後ろから押されて思うに任せません。やっと順番が来て係りの人にパスとパスポートを差し出し、確認のハンコを押してもらいます。これは何とかうまくいったのですが、パルマからコモへの予約を入れようとしたら未だ予約シートの記入が終わっていません。グズグズしていると列に並んだ人達からブーイングが起きそうです。かといって、列に並び直していたらパルマ行きの列車に乗り遅れてしまいます。遂に予約を入れるのは諦めることにします。暑さと疲れとで体力も気力も薄れてしまいましたが、もうひと頑張りです。えーーーと、パルマ行きの列車は。。。とホームを探しますが、これがちっとも分かりません。右往左往しながらようやっとのことで列車に乗り込むことができました。ぱふーーー。。。

列車は随分と混んでいました。1等車とはいっても、空席を見つけるのが難しい位です。やっとのことで、太ったおじさん2人連れの空き席に座らせてもらうことになりました。よっこらしょっと。。。朝から歩き回ったせいか、席に腰を下ろすとどっと疲れが出てきます。ボローニャからモデナまでは今朝通りましたので大体の様子は分かります。パルマまではどの位かかるのでしょうね?おじさん達の話の合間にちょっと訊いてみます。パルマはモデナから2−3つ先にあるようです。この分だと7時前にはパルマに着けるでしょう。それからホテルに行って、レストランを探して、えーーーと、何食べようかな?空想はどんどん膨らんでいきます。そうこうしている間に列車はパルマ駅のホームに滑り込んでいきました。パルマの駅は意外と小さな感じです。表に出ようとしましたら、小さな切符売り場があります。先ほど諦めた明日のパルマからコモ行きの列車の指定席にもう一度アタックします。窮屈な列に並んでやっとのことで窓口に辿りついたら、『予約は必要ありません』とのこと。大丈夫かなぁ。。。

パルマの駅前広場は随分と賑やかです。でも、ボローニャの街並みほどはゆったりとしてなく、何となくゴチャゴチャした感じの街です。建物もあまり近代的とはいえません。イメージしていたのとはえらい違いですね。ま、そういっても仕方ありませんのでホテルに向かいます。ここのホテルは日本で予約していて、駅の近くをとってもらったのですが、もう7時近くなのでタクシーで行くことにします。運転手さんにホテルの地図を見せますと、アッという間に目指すホテルに連れて行ってくれました。フロントで手続きしたのですが、ボーイさんも誰も出てきません。フロントのお姉さんに『あっちに行ってこっちに行って。。。』と指示されますが、えっちらほっちら荷物を抱えて指図された方向に行ってもちっとも部屋が分かりません。このホテルは通路が狭い上に構造が複雑で迷子になってしまいます。散々迷った挙句に見つけた部屋は狭くて、とてもゆっくりできそうに思えません。疲れた上に暑くては外に食べに行くのもしんどくなります。あーーー、もう妥協してホテルで簡単に済まそうか。。。いやいや、そうはいきません。これしきのことでへこたれて何するものぞ。。。

そうは言っても、パルマに心当たりのレストランがある訳でもありません。困ったときの神頼み!『地球の歩き方』をパラパラとめくってみます。ナニナニ、『ちょっとお洒落した町の人で賑わう、ミシュランの星付きレストラン』。えーーーっ、ミシュランね!いいんじゃなーーーい。『前菜にはパルマの生ハムをお忘れなく』。フンフン。『パルメザンチーズのクレープやポルチーニ(イタリアの松茸)のクリーム和えも最高』。いいじゃん!『創造的なパルマ料理のお店、パリッツィ』。決まりですね。バスでも行けるらしいのですが、フロントのお姉さんに訊きますと、地図の上に道順をマークしてくれます。何でも20分位歩くのだとか。部屋探しで散々苦労したので、そのまま鵜呑みにはできませんがとにかく歩いていくことにします。駅前の雑踏とは違って、街中の古風な建物はなかなか情緒があります。



結構歩いたなあ。。。と思った頃、ようやくそれらしき看板を見つけました。通りに面しているのかと思っていたら、10m位入ったところに小さな入り口が見えます。上品でなかなかいい感じです。期待できるかもかも。。。



お店は夜の部が開店したばかりらしく、一組のお客さんしかいません。このレストランは奥の部屋と入り口脇の小部屋とに分かれています。奥の部屋はグループ専用らしく、ちょっと広めになっています。私が案内されたのは小部屋の方ですが、細長い造りにはなっていますがとてもお洒落でセンスがあります。それにお店の方も落ち着いた上品な感じの良い人ばかりです。『ばかりです』とはいっても、お給仕は基本的におばさんが一人でこなしていますが。考えてみますと、ボローニャのホテルで豪華な朝食こそ頂きましたが、後はペットボトルの水とイモラ駅で飲んだビールとおつまみのピザしか口にしていません。その水分も蒸し暑い夕暮れのパルマの街をホテルからレストランまで歩いている間にすっかり蒸発してしまっています。お腹はペコペコのペコちゃんで、喉はカラカラのカラちゃんです。何はともあれ、『ビッラ・ビッラ・ビッラ、ビッラ下さーーーい!』ですぅ。。。

こういう時に飲むビッラの味はまた格別ですね。日本の生ビールほど軽くなく程よいラガーの味を残したビッラは絶妙な冷え加減で、一気に飲み干してしまいます。クーーーッ、美味しいっ。。。ちょっと落ち着いてからワイン・リストを見ていましたら、スプマンテのところに『フェッラーリ』の銘柄が。。。最近、日本でもところどころの酒屋さんで見かけますが(ここをご覧下さい)、勿論今朝行った自動車のフェラーリではありません。でも、今日は正にフェラーリ・デーです。少々高くてもこれで乾杯といきましょう!でも、フルボトルはちょっとお財布が。。。ハーフにしておきましょうね。



さあて、今夜のメニューですが、パルマといったら何はともあれ『生ハム』ですね!ヨーロッパのお肉屋さんでも、陳列棚に並んだ高級生ハムの中でもパルマの生ハムは別格です。でも、ここはその本場のパルマですから、お皿に盛られた生ハムの大きさは半端なものではありません。付け合せ一切なしの生ハムは迫力満点です。ビッラとも相性抜群なのでしょうけど、フェッラーリとならもう言うことなしですぅ。。。



素材の良さだけならミシュランも星は付けなかったのでしょうけど、このお店では余程のシェフが腕を揮っているのでしょう、どのお料理にも盛り付けのセンスが光っています。食べるのが勿体ない位ですねぇ。でも、お腹のペコちゃんがお待ちかねです。パクッ。。。



イタリア料理といいますとパスタとピザを思い浮かべますが、お米料理のリゾットもよく見かけます。パルマのもうひとつの名物はパルメジャンチーズですね。さすがに地元だけあってリゾットにもたっぷりと使われています。アツアツのお粥に濃厚なパルメジャンチーズがからまれば、もう言うことはありません!



お米じゃなくって、豆の煮込みだったかなぁ。。。


お料理はまだまだ続きます。フェッラーリも空けてしまい、今度は赤ワインを頂くことにします。昨夜は大奮発してバローロを飲みましたが、連日という訳にもいきません。でもそこはミシュランの星がついたレストランのこと、ちゃあんとリーゾナブルなお値段で素晴らしいワインが用意されています。ワインリストを慎重にチェックして、何となくピンときた赤ワインを選びますと。。。これが素晴らしい香りと深い味わい!お値段は昨夜の1/3ですが、香りと味は全く見劣りしません。こういうワインを揃えられるのが本物のレストランなんですね。それにしても、何というお料理の美味しさ!胃袋は既に一杯となり、そろそろ食道にも痞え始めています。うーーー、苦・苦しいっ。。。




うーーー、もう何も入りましぇーーーん。。。と、と、そこにパルミジャーノ・レジャーノの巨大な塊を入れたケースが。。。『チーズは如何ですかぁ?』、『く、下さーーーい』。。。普通、食後のチーズはいろんな種類が混じっていますが、ケースの中に入っているのはパルミジャーノ・レジャーノだけです。ですが、塊によって熟成年数が違います。



お皿に2年もの、3年もの、4年ものと切り分けて頂きます。もう喉のところにまでお料理が詰まっていますが、パルマに来て本物のパルミジャーノ・レジャーノを試さない手はありません。強引に口の中に押し込みますと、ジャリッとした特有の旨みが口の中一杯に広がります。うーーー、美味しいですぅ。。。4年ものなんかもう絶品ですぅ。。。



さすがにデザートとエスプレッソは入りません。もうギブアップ!これだけの美味しいお料理と素晴らしいワインを頂いて、しかもお勘定はリーゾナブル。パルマに滞在する機会がありましたら、是非このパリッツィでミシュランの味とサービスを堪能してみて下さい。

早いもので、イタリアで3回目の朝ごはんです。宿泊に関してはそうでもなかったのですが、朝食ビュッフェはさすがパルマのホテルです。昨夜パリッツィであれほど食べたのに、朝になったらまた食欲復活です。例によって、ハムとチーズのテンコ盛りですが、今朝はパルマの生ハムとパルメジャーノ・レジャーノですから、その美味しさはひとしおですぅ。今日はパルマからコモに移動するだけですからそんなにエネルギーは要らない筈なのですが、ついつい取りすぎてしまいます。どれどれ、もう一皿。。。



朝食を食べたら、出発までの時間を利用してパルマの街中を散策します。今日は土曜日ですので、パルマの朝市を見物しようと思います。ホテルからバス通りに沿って街中を歩いて行きます。土曜日の朝ということもあって、通りを歩いている人も何となくゆったりとした雰囲気です。暫く歩きますと、広い芝生の向こうに大作曲家ベルディの顔が描かれた巨大な垂れ幕が見えます。垂れ幕は大きな建物の壁に掛けられていますが、音楽祭でもやっているのでしょうか?その広場に沿って、テント張りの沢山の露店が立ち並んでいます。これは期待できそうですね!夜露か何かでグチャグチャにぬかるむ芝生を横切って近づいてみます。パルマの朝市ならチーズにハムにポルチーニに。。。と思っていましたら、期待に反してお店の商品は衣服とか靴とか雑貨ばかりです。パルマでTシャツを買っても食べれないし、仕方ないですね。朝市はパスすることにします。



予定していたミラノ行きの列車の発車時刻までには未だ少し余裕があります。地球の歩き方で紹介されていたトスカニーニの生家に詣でてみることにします。パルマは食の都であるばかりではなく、芸術の都でもあります。そう、人間は美味しいものを食べ、美味しいワインを飲むと幸せになって左脳が活発になるのです。トスカニーニは生前世界最高の指揮者と言われていましたが、パルマの生まれだったんですね。市内を流れる大きな川に架かる橋を渡って、曲がりくねった住宅地の方に進みますと、小さな通りに沿って昔ながらの家々が肩を寄せ合うように立ち並んでいます。その中の1軒の軒先に見慣れたトスカニーニさんの肖像画が置かれています。ここがあの伝説的な指揮者の生家のようです。今は記念館となっているようで、珍しい展示品もあるのでしょうけど、家を眺めただけで引き返すことにします。折角来たのに、中に入らなかったのはちょっと勿体なかったですね。



ホテルに戻る途中で何軒かの食材店に出会いました。大抵のお店にはワインが置いてあります。未だこの先イタリア各地を回りますので、パルマで重たいワインボトルを買い込む訳にはいきません。そうそう、旅行前に散々自慢しまくったおかげであちこちから頼まれたお土産を買うことにしましょう。えーーーと、乾燥ポルチーニがありましたね。別にパルマ名物という訳でもなく、イタリアのどこに行っても買える食材ですが、やはりパルマで買ったとなれば価値があります。とある食材店の中に入ります。



お店の中に入って先ず目に飛び込んできたのは、パルミジャーノ・レジャーノの巨大な塊。。。一切れで5−6kgはありそうな塊に圧倒されます。日本でしたら、この塊を100個位にスライスして売るのでしょうけど、さすがにパルマはパルミジャーノ・レジャーノの産地だけあって、実に大らかなものです。しかも、そんな塊が1個で2千円位。。。もうイタリア旅行を切り上げ、ここのチーズを全部買って日本でワイン&チーズ屋さんを始めようかという気にもなってしまいます。でも私のスーツケースは衣類で満杯ですから、この巨大なチーズの塊は1個たりとも入りません。しょうがない、乾燥ポルチーニだけでも買いますか。。。『ポルチーニ』とはキノコの意味らしいのですが、感覚的には乾燥松茸といった感じがします。日本と違って松茸とはいっても意外と安く、薄くスライスして乾燥させたポルチーニでも大した金額ではありません。なるべく見栄えのするパクを選んで1袋買い込みます。ワインの棚にはモデナとかパルマのワインもありますが、昨日買い込んだフェラーリのツインワインだけでもお荷物なのに、これ以上買い込む訳には参りません。泣く泣くお店を出ます。



ホテルをチェックアウトして駅に着きますと、列車を待つにはちょうど良い頃合です。パルマの駅にはプラットホームが2本しかありませんから、ボローニャみたいに迷うことはありません。ヴォーーーッと汽笛を鳴らしながら列車が近づいてきました。ステップを登ってスーツケースを列車の中に引きずり込みます。ふーーーっ。。。やっと乗れました。今日の列車はミラノ行きですが、1等車はコンパートメントになっていて、各席はガラス戸で仕切られています。土曜日のせいかどこにも空いた席はないようですので、相席をお願いします。頼み込んで、4人連れのファミリーのコンパートメントに座らせて頂くことになりました。ミラノまでは2時間もかかりませんが、通路に立っているよりも、相席とはいえ座っている方がずっと楽です。このファミリーはアメリカから旅行に来たとのことで、そろそろ列車の旅にも飽きてきたのか女の子はお母さんとトランプをして時間を潰しています。お兄ちゃんはハイスクール位の難しい年齢で、あまり口をききません。お父さんはこれまたどうしたことか、お母さんと話すこともありません。なんだか気まずい雰囲気ですぅ。。。最初の日にミラノのマルペンサ空港には立ち寄ったのですが、ミラノ市内は全くの初体験です。ミラノ中央駅は巨大と聞いていますが、コモに行くにはどうやって乗り換えるのでしょうかね?心配の種は尽きませんが、ま、何とかなるでしょう!列車は次第にミラノの街並みに入っていきます。

私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。

(赤) イタリア: AZIENDA AGRICOLA CASTELLUCCIO RONCO DEI CILIEGI (1997)

特に解説はありません。

ミシュランの星に輝く極上のお料理とくれば、それなりのワインを選びたいものです。アペリテフはフェラーリのスプマンテを頂きましたので、次は赤ワインと思ってワインリストをチェックします。そんなに高級なワインは飲めませんので、そこそこのお値段のワインを選んで注文します。こんな一流のレストランでも、2千円そこそこで本格的なワインが飲めるなんて信じられませんね。

この赤ワインは我ながら大正解でした(←自画自賛)。香りが何ともいえず素晴らしいのです。それに絶妙の温度で供されています。この温度でないとワインの持っている香りは引き出せません。これを繊細な味付けのお料理と一緒に頂くのですから、美味しくない訳がありません。イタリアワインは最高ですねっ!



ラベルコレクターを持ち込んで、テーブルの上でラベルを剥がそうとしていたら、ボーイさんがやってきて(みっともないから)お店でやりますとのこと。それは失礼とお兄さんに任せたら、何だかお店の奥で悪戦苦闘している様子。あんまりラベルを剥がした経験がないのでしょうかね?それとも、お店に来てまでもラベルを持ち帰ろうとするお客さんが少ないのでしょうかね?ミシュランの審査員もさすがにラベル剥がしの技術までは採点しなかったようで。。。










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