浅草・雷門 千曲錦



『Hanako』シリーズ第一弾です。

いつもトレンディな特集で話題の週刊『Hanako』の5月20日号(1998 #491)は『おいしく安いワイン!』の大特集でした。メインは、『おいしくワインの飲める店』としてたくさんのレストランを紹介しているのですが、巻末に『1本2000円以下のおいしいワイン。こだわりの店なら確実に見つかる』というキャッチフレーズで優良ワインショップも紹介しています。1冊340円ですが読む価値は十分にあります。私はこれを読んだばかりに、得難いワインと共にえらい出費をしてしまいましたが。。。

ところで、ワインのお店を何故『ワインストア』でなく『ワインショップ』というかご存知でしょうか。なんでも、ショップとは、店員がお客に対して何かをするお店という意味らしいです。例えば、コーヒーショップでは店員がお客さんのためにコーヒーを作りますし、バーバーショップでは床屋さんがお客さんの髪を刈ります。これに対して、ストアでは基本的に店員はお客さんの面倒を見ません。ブックストアでは、お客さんが自分で本を探します。この意味だと、本当にワインショップといえるお店がどれ位あるでしょうか。もっとも辞書で調べると、アメリカではお店をストアといい、イギリスではショップという。。。とありますので、単なる米語と英語の違いなのかもしれませんけど。

ワインは今やどこの酒屋さんにも置いてありますが、酒屋さんとワインショップの違いは、棚に並んでいるビールや日本酒といった普通のお酒とワインの数の比率だけでなく、いかにお店が情熱を持ってワインに接しているかにあります(と思います)。普通の酒屋さんは他のお酒と同じようにワインも外から見えるように棚に置いてありますが、ワインの特性を考えるとこの置き方はあまり感心できません。ワインの敵は日光です。ぶどうのうちはサンサンと太陽の光を浴びて育つのですが、いったんワインになると日光を遮って静かに眠らせるのがよいのです。そこへいくと、ワインショップでは地下のカーヴや壁で仕切ったワインセラーにワインを寝かせて置くのは勿論のこと、温度を一定に保ったり、説明書きを付けたり、国別に並べたりとそれなりに細心の注意と情熱をもってワインを扱っています。

雷門は、浅草の中心である浅草寺から続く仲見世通りの入り口にあります。雷門がある場所の町名が浅草一丁目で、雷門通りを挟んだ雷門のない方の町名が雷門二丁目というのも面白いところです。千曲錦は、雷門通りから2−3ブロック隅田川沿いに入った裏通りにあります。遠くから来る人は、あらかじめ地図で調べておかないととても見つけられないでしょう。このような場所にあっても、Hanakoに紹介される位ですからこのお店はかなり知られているのでしょう。紹介文によると、お店のご主人は日本には未だ100人しかいないフランス政府お墨付きのワインを売る達人『コンセイユ』の資格を持つ3代目だそうです。アカデミー・デュ・ヴァンでも講師を務め『ワインをどうおいしく飲めばいいか』という解説の分かりやすさには定評があるそうです。

お店自体は非常に小さく、売られているワインの本数もそれほど多くはありません。入り口にはお手頃のワインが少々とその奥に小さなセラーがあり、ここに銘柄ワインが置いてあります。中にテーブルと椅子が置いてあり、単に飾りかと思ったらどうやらここでご主人とおしゃべりしながらワインを探すのがお勧めらしいです。ご主人は若旦那といった感じの貫禄のある方で私は残念ながら話しかけませんでしたが、馴染みになれば結構楽しくワインを探せるのではないでしょうか。

私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。

(赤) イタリア: TORREVECCHIA ROSS

『トッレヴェッキア・ロッソ』はシチリア州(島といった方がピッタリくる)産のすこし辛口の赤ワインです。等級はI.G.T.になっていますがよく分かりません。パスタ、ロースト、赤身肉の料理に良く合います。ネロ・ダーヴォラ、カラブレーゼ、フラッパートの3種のブドウを使って造られました。16℃位でお召し上がり下さい。

最近は沢山買い込んでもすぐ飲んでしまうからか、家にあまりワインのストックがなく、Hanakoに紹介されていたこのワインを飲みながらこの文章を書いています。紹介文では、『渋味はないけれど、コクありバランスよし』とあります。コクがちょっともの足りませんがイタリアの赤ワインにしては透明でクセのない味です。いろんなお食事とよく合いそうです。

。。。と書いた後で3日続けてこのワインを飲みました。珍しくも、1日で飲みきれなかったからです。3日目になると味に慣れてきたのかとても美味しく感じられるようになりました。気のせいか、なんとなくイタリアのワインの特徴が分かってきたようです。結構渋味もコクも感じとれます。お値段も手頃だし、ちょっとブルーチーズでも摘まみながら飲むとこれはイケます。



(白) イタリア: EST! EST!! EST!!! (1996)

『エスト!エスト!!エスト!!!』の由来は次の通りです。モンテフィアスコーネにある古いサン・フラヴィアーノ聖堂に歴史的事件を証言する古い碑文があります。紀元1111年バヴァリアンの司教ジョン・フュージャーはヘンリー5世の命によりローマへの旅にでました。ワインの権威でもあるこの貴人は彼の忠実な僕、マーティンを先行させ自分の口に合う質の良いワインを出す宿を探させました。彼はマーティンに、良いワインを見つけたら、”エスト”(ここです)と、また、もしワインが特に上質であったら、さらにエスト!エスト!(ここ、ここです!!)の文字を宿の入り口に記すよう指示しました。

マーティンは、モンテフィアスコーネで極上のワインを見つけ思わず、”エスト!エスト!!エスト!!!”と3回書いてしまいました。フュージャーは、このワインがあまりにも美味しかったのでモンテフィアスコーネにとどまり残りの人生をそこで過ごし、結局ローマには行きませんでした。この物語を記念して、モンテフィアスコーネでは、毎年8月に彼のお墓に一樽のエスト・エスト・エストを注ぎかけます。

厳しく管理された、この素晴らしいワインは今日でも大変高く評価されています。人々は、選り抜きの葡萄と優れた技術で、極上のワインを長年の間、丹精込め作っています。

イタリアはラツィオ州の産で、等級はDOCです(よく分かりません)。ミネストローネ、卵料理、パスタに良く合います。トレビアーノとマルバージアの2つの葡萄の品種から造られています。10℃−12℃に冷やしてお召し上がり下さい。

私だったら、このワインのために一生を捧げることはなかったでしょう。飲んだ印象は非常に純粋な白といった感じです。モーゼルワインのような酸味・甘みはなく、本当に無色・透明な味です。恐らく、ジョン・フュージャーが聖職者であるが故に俗化された味を好まなかったのではないでしょうか。してみると、私はただの俗人か。。。









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