銀座・レカン



レカンのケーキといえば、女性にとっては憧れのブランドです。銀座4丁目交差点から京橋方向に向かって2ブロック進んで左に折れた最初の裏通りにお店があります。とても小さなお店なので、普通のケーキ屋さんのように見えます。でも入り口に近づきますと、その格の高さが感じとれます。店内のショーケースには宝石のような色とりどりのケーキが並んでいます。レカンのケーキは高級で有名ですが、お値段はそんなに高くはありません。美味しさと美しさを兼ね備えたレカンのケーキ。。。1万円で何個位買えるのでしょうか?



〈答え:私の場合は、26個でちょうど1万円をオーバーしました。1個400円見当と思えばいいでしょう。〉


レカンは、ケーキだけでなくフランス料理でも有名です。都内には高級なレストランは多々あるでしょうけど、真珠で有名な銀座4丁目ミキモト地下にあるフランス料理のレカンはその最上のランクに位置する超一流のレストランといっていいでしょう。グルメのホームページなどを見ても誉め言葉以外は見当たりません。お料理、サービス、お店の雰囲気、どれをとっても最高です。勿論ワインも。。。



ところで『レカン』とはどういう意味なのでしょうか?私はてっきりパリかリヨンにある三つ星レストランの系列だと思っていたのですが、純粋に日本のお店だそうです。ちなみに『L’ecrin』とは『宝石箱』という意味らしいです。レストランは地下にあるのですが、1階はあの有名なミキモトなので、関係があるのかもしれません。それにしても、1974年に開店して僅か20年あまりでこれだけの知名度を獲得した実力は驚くばかりです。いろんなホームページを見てみましたが、殆どの人が最高のランクに位置付けておられます。





レカンの場所は、銀座4丁目の交差点の直ぐ近くです。今の時期ですと夜になると本物のモミの木に眩いばかりの電球がデコレーションされたミキモトのクリスマス・ツリーが目印です。ただ、入り口はとても小さく、人一人がやっと入れるくらいのドアしかありません。表のメニューとレカンの看板に気がつかないと見過ごしてしまうかもしれません。レカンはフラリと入るようなお店ではありません。予めきちんと予約し、念入りな準備をし、ある程度の緊張感をもって行かないと、他のお客様にも迷惑になります。



入り口の重く立派な扉を開けますと地下に続く階段に赤い絨毯が敷いてあります。靴が沈み込むというほどではありませんが、一段降りる毎に緊張感が高まってきます。クロークで荷物を預けると、入り口に小さな小部屋があります。ちょっとした待合室の雰囲気ですが、食前酒が楽しめるような小さなバーがあります。そこから一段低くなったところに中くらいのダイニング・ルームがあり、テーブルが10個くらい置いてあります。ここはグループの席のようです。この部屋から羽を伸ばしたように細長いテーブル席があります。ここはカップルの席のようです。奥の部屋の様子はわかりません。調度品はそれほど絢爛豪華という訳ではありませんが、さりげなく飾ってある絵などもそれ相当のものなのでしょう。カップル席が細長い形をしているのは通路側にソムリエとかウエイターの方が、お客さんの気を散らすことなく作業するためではないかと思います。事実通路側に背を向けていると何時どうやって近づいてきたのか全く分かりません。まさに最高のタイミングでスッとお料理が運ばれてきますし、ちょっとグラスが軽くなったなと思った瞬間にはワインが注がれているといった具合です。まさにあうんの呼吸とでもいうのでしょうか。

席に座りますと(勿論自分で椅子を引いてはいけません。全て『Let it be!』です。ここでは一切が受け身でいればいいのです。ウエイターの方が最初から最後まで取り仕切ってくれます)、テーブルの上にはキャンデラと小さなクリスマスの飾りが置いてあります。ちょっと落ち着いたところでシャンパンのお勧めがあります。これも絶妙のタイミングです。でも、ここで『わっ!シャンパン!どうしよう!』なんて考えてはいけません。普通のディナーならまだしも、今日はクリスマス・ディナーなのですから、シャンパン抜きではお餅のないお正月みたいなものです。すかさず、『頂きます!』と当然のごとく明るく注文しましょう。ちなみに、今回のシャンパンは『La Grande Dame』の1989年でした。私が飲んでいるただのスパークリング・ワインとは随分と味が違いましたね。。。

ちなみに、『ラ・グランダム ’89』は、特級畑の葡萄だけから造られ、ピノノワール種が62%、シャルドネ種が38%の比率になっています。普通に買うと、一本が12,000円位するそうですぅぅぅ。。。このシャンパンは、『Veuve Clicquot(ヴーヴ・クリコ社)』が、ワインにとって『偉大な年』といわれる1989年の葡萄から造りました。社名は、ヴーヴ(未亡人)・クリコを称えて『偉大な女性』と名付けたことに由来しています。特徴あるボトルの形は、ロシア皇帝に贈られた当時のボトルを再現しています。

そうそう、今晩の主役のワインを選ばなくてはいけません。ずっしりと重いワイン・リストを渡されて恐る恐る開きます。ワインは勿論フランス産で、産地ごとに見慣れないフランス語で名前が書いてあります。名前の横にちゃんとお値段が書いてあります。ここで緊張感がぐっと緩みます。どんなに高くてもお値段が分かっていれば安心です。そうでなければその後の美味しいお料理が喉を通らなくなるでしょうから。。。それにしても、私が普段見慣れた2000円以下のワインはどこにもありません。中には??万円以上もするのもあります。まあ、ここは思い切っていいのを選びましょう。コースもコースですからね。私が選んだのは『Chateau La Dominique 1986』でした。勿論初めて飲んだのですけど、ちょっと乾いた土の香りが感じられるなんとも曰く言い難い味でした。私には見えなかったのですが、ちゃんとデキャンタして、しかもある程度時間を置いてお料理とペースが合うようにセットする手際にもまた感心しました。

『シャトー・ラ・ドミニック グラン・クリュ・クラッセ』は、メルロー種75%、カベルネフラン種15%、カベルネソーヴィニヨン種5%、マルベック種5%から造られています。名前の由来は、オーナーの一人がドミニカ人だったからだそうです。

で、いよいよクリスマス・ディナーの登場なのですが、次のようなメニューでした。







Menu de Noel

一皿目: 聖夜の詩

大きなお皿に本マグロのカルパッチョ風と生ハムの重ね着がのっかっていました。一口で入りそうですが小さく切り分けてゆっくりと頂きます。シャンパンとの相性が絶妙ですね。。。

二皿目: キャビアと地鶏卵のガトー仕立て ア ラ クレーム ド シャンパーニュ
 
以前にカスピ海産のキャビアをガバと食べた話を書きましたが、今回もかなりの量が卵のムースみたいな台にのっかっています。下が見えないところがいいですね。その隣にはクリームと板状の何かがありました。その何かを小さく切ってキャビアをのっけて頂く訳です。フムフムこの味だったか。。。とあのキャビアの豪快な一気食いを思い出しながらお上品に頂きました。

三皿目: フォアグラとシャンピニオンソバージュ ”ファミーユ ロワイヤル”
 
野菜の炒め物を敷いた上に、ほとんど内部はレアなんだけど外部はかりっと焼き目をつけた絶妙な火加減のフォアグラがのっかり、これは最高に美味しかったですね。先ほどデキャンタしておいた赤ワインが頃合いもよく空気と馴染み、このフォアグラの豊潤な感触と一体になってそれはもう幸せな気分になります。

四皿目: 塩トマトのポアレ 母なる海の恵み
 
これは予期しなかったお魚の料理です。鮑とか鯛とか海老とか軽く火を通したお魚と野菜がほどよく混じり合い、なかなかヘルシーな一品でした。こんなお魚料理にも赤ワインが妙に合います。

五皿目: クリスタルの輝き
 
これはお口直しとのことで、牛乳のシャーベットにシャンパンをふりかけた一品のようでした。さっぱりはしますが、せっかくの味が消えていくのが勿体なくて。。。

六皿目: 丹波牛のフィレ肉 栗の葉包み ”緑の草原”
 
ここでは、フィレ肉かロース肉を選べますが私はフィレ肉にしました。肉もなかなか上等ですが、これを栗の葉っぱで包んでローストしたところが手の込んだところです。このようなメインの料理ではちゃんと保熱のために皿の上に半円形の蓋がかぶせられてきます。目の前でパッと蓋を取ると、柔らかな蒸気と共に美味しそうなにおいが鼻をくすぐります。

七皿目: アヴァンデセール
 
これが思い出せないのですよね。アイスクリームのような気もするのですけど。。。

八皿目: デセール ド ノエル
 
これはケーキのレカンの真骨頂です。ケーキ自体が素晴らしいのは勿論ですが、針金のように細いキャラメル(?)をケーキの上にかぶせた造りが食べるのを躊躇させるような美しさをしています。

締め: キャフェ と プティ フール
 
飲み物はコーヒーか紅茶が選べます。それに小粒なクッキーが幾つかお皿に盛られます。ここで使われるお皿はクリスマス専用のものです。勿論フランスから取り寄せられた名品ですが。ついでに、ナイフやフォークはすべて銀製です(クリストフルというブランドらしいです)。ずっしりと重たい感触はそれだけでお料理を引き立たせます。


普通、かなりのフルコースを頂いても2時間もあれば終わってしまいますが、私はなんと4時間も過ごしてしまいました。それでも帰りを促されることはありません。全てがお客様に合わせたおもてなしの極致なのです。レカンはフツーの人にとっては、一生に一回行ければ幸せと思って間違いないでしょう。素晴らしいクリスマス・ディナーでした。







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