ソーリュー・La Cote d’Or



今日は2006年F1フランスGPのフリー走行の日です。前年の11月のチケット購入の前後からインターネットでサーキット近くのホテルを探しまくってきましたが、なかなか見つかりませんでした。なにしろ、フランスGPが開催されるマニクール・サーキットが何処にあるかすら知りませんでしたので、ホテルを探すのも一苦労。どうやらヌベールという町が一番近いようですが、海外旅行を準備する際の指南書である「地球の歩き方」にもヌベールの表記はあっても紹介のページはありません。インターネットで更に調べていきますと、マニクール・サーキットに隣接してホリディ・インがあることが分かりました。でも、いわゆるサーキット・ホテルと呼ばれるもので、レース期間中は選手や関係者の宿泊専用となります。私も何度か予約を試みましたが、すげなく断られてしまいました。止むを得ず、ブールージュという町のホテルを予約することにしました。マニクールからは100kmくらい離れた場所ですが致し方ありません。そんなホテルでも、半年以上前の12月に予約したというのにF1開催時期のため残り部屋希少とのことで保証金まで払わなければなりませんでした。

それから半年後の7月、ロワール河ワイン&古城紀行を楽しんだ後、ブールージュの町にやってきました。苦労して予約した「メルキュール・オテル・ド・ブルボン」という大層な名前のホテルは、昔修道院だった建物を改装したとかで、設備は近代的で内装も素晴らしく綺麗です。それに、緯度の高いフランスとはいっても蒸し暑い盛夏の時期には申し分なく冷房は良く効いています。ホテルには「アベイ・サンタンブロア」というレストランが併設されています。このレストランは巨大な塔の中にあって、吹き抜けの高い天井からシャンデリアが吊り下げられ、床には深紅の絨毯が敷いてあります。夕食時は宮殿の晩餐会の雰囲気です。ま、それはさておき、金曜日のフリー走行を観るためにブールージュからマニクール・サーキットに向かいます。マニクール・サーキットはN7という高速道路に隣接していますが、ブールージュからはヌベールの南外れまで一般道で行き、そこからN7に入って南下します。どこの国のGPでもそうですが、金曜日のフリー走行は観客の入りが少なく、サーキットの近くでも渋滞が起きることはまずありません。緩やかな起伏のブルゴーニュの丘陵地帯を100km近くの(私にとっては)猛スピードですっ飛ばします。地方の道路ですが、路面・標識共に素晴らしく良く整備されています。対向車は殆どなく、快適な朝のドライブです。

70−80kmも走った頃でしょうか、ようやっとN7に合流するインターチェンジに入りました。ここからマニクール・サーキットまではほんの数キロです。順調に来たな。。。と安堵してN7の本線に入り、サーキットを目指します。ところが、数分も走らないうちに前方に長大な車の列が見えてきました。ハテ、どこかで工事でもしているのかなと思って、列の最後尾で停まります。お盆の帰省シーズンの東名ではありませんが、視界のきく限りの大渋滞です。おまけに、ノロノロ運転どころか数メートル進んでは停まるの繰り返しです。余裕をみてブールージュを出てきたのですが、これではたまりません。小山を抜け、丘陵を越えても渋滞状況は変わりません。あちこちの車から人々が降りてきて路肩を歩いては休んでいます。歩くよりも車の方が遅いので、狭い車内に押し込められているよりはマシまのでしょう。それにしても、フリー走行の日にこんな人出とは信じられません。近郊の車が多かったようですので、フリー走行の日はサーキットを地元の人たちに無料開放しているのではないのかと思ったほどです。2時間近くの渋滞でヘロヘロになりながらも、ようやっとサーキットに辿り着きました。チケットは正面入り口近くの上席を確保したのですが、駐車場がサーキットの真後ろにあって、再び駐車場までの渋滞を余儀なくされます。艱難辛苦の運転を終えて入場口からサーキットに入ったら、既に午前のフリー走行は終わっていました。。。

今夜はマニクールから100kmほど離れたソーリューという小さな町にある故ベルナール・ロワゾーさんが一代で築き上げたミシェランの三ツ星レストランである「コート・ドール」に泊まることにしています。目的はディナーなのですが、ついでに宿泊も予約したら、フランスの革命記念日ということもあってスイーツルームしかとれませんでした。コートドールはルレ・エ・シャトーグループに加盟しており、ただでさえ高級なホテルなのですから、スイートルームのお値段は押して知るべしです。そんなところに泊まるのですから、なるべく長い時間ステイしたいですね。それに、翌朝はまたフランスGPのフリー走行と予選を観るためにマニクール・サーキトに戻らなければなりません。今日の渋滞を考えると、ホテルは早朝に発たなければならないでしょう。そういう訳で、金曜日午後のフリー走行も最後までは観れません。後ろ髪を引かれる思いで午後のフリー走行もそこそこにサーキットを後にしてソーリューに向かいます。N7に入ってヌベール目指して北上します。高速道路はスムーズに車が流れています。当たり前でしょう、フリー走行が始まっているのに逆方向に向かっているのですからね。今朝の渋滞は何だったのだろうと疲れも倍増します。N7のヌベールのインターから下りて、東に向かいます。一般道ですが、途中までは道幅の広い快適なドライブが続きます。ところが、途中から山道に入り、くねくねと曲がる狭い坂道を上ったり下ったりの難行の連続です。地図を確かめながら疲労困憊の末、ソーリューの町外れに着きました。マニクールから2時間はかかったでしょうか。

ソーリューは、昔は街道宿場町のような存在だったらしく、気が付くと通り過ぎてしまいそうな小さな街並みです。コートドールの場所は分かりませんが、有名なレストランなので直ぐに見つかるだろうと思ったのですが、適当に路地を回っていましたら直ぐに町外れに出てしまいます。仕方なく路地で出会った地元の方に訊いてみますと(コートドール!コートドール!と連呼しただけですが。。。)、あそこを右に曲がって、その先をまた右に曲がって。。。と言っているようです。お礼を言って、それらしい方角に車を進めますとちょっとした広場に出ました。ソーリューの町の中心のような感じです。コートドールはどこにあるのだろうと、ぐるりと見回しますと広場の反対側のくすんだ建物の壁に大きな看板が見えます。やれやれ、やっと到着しました。ホテルの前の駐車スペースに車を停め、荷物を下ろします。入り口のドアの隣にレセプション・カウンターがあります。とは言っても、大したスペースではなく、奥のオフィスを合わせてもそれ程広さはありません。チェックインを済ませて部屋に向かいます。小さなガラス張りのエレベータに乗って3階で下ります。建物の中は木目基調で、歩くとミシミシする感じです。部屋に入りますと、結構広いスペースです。バスルームはピカピカ、収納は有り余るほど、寝室も広くてリビングと合わせたような開放感があります。ベランダからは庭園とプールとレストランが見えます。せっかくですので、ディナーの前にプールを楽しみましょう!水着に着替えて地下に下り、プールに向かいます。プールとはいっても、庭の一角にしつらえられた池くらいの広さです。ま、泳ぐことが目的ではありませんので、水(温水プールだそうですが)に浸かるだけでも由としましょう。

水浴びの後はいよいよディナーの時間です。例え酔いつぶれても、部屋まで這って帰れます。気兼ねなくワインを頂きましょう!先ずは庭園にしつらえたテーブルで、ちょっとしたアミューズメントをつまみながら食前酒のシャンパンを頂きます。薄暮の明かりに輝く庭の木々を眺めながらのシャンパンはまたひとしおの美味しさです。シャンパンの後はレストランに移動します。レストランは幾つかの部屋に区切られていて、真ん中の部屋のテーブルに案内されました。庭に面した良い席です。ほどなく正装のソムリエさんがテーブルにやってきます。お給仕の方が、「あなたがたはこのソムリエさんに会えて幸運ですよ!」とかなんとかおっしゃいます。ベルナール・ロワゾーさんの『星に憑かれた男』によりますと、このお店のソムリエさんはフランスでも相当に名の知られた方だったそうです。もしや本人かと思ってお名前を伺ったら、違ったようです。何でもそのソムリエさんは何年か前に別のお店に移られたのだとか。折角ですからソムリエさんにワインをお任せしても良かったのですが、あんまし高級なワインを勧められても恥をかくし。。。と考え直して自分で選びます。やはり地元産のブルゴーニュワインの品揃えが豊富です。お料理はコースで、量はかなり少な目です。さすがに洗練された味と上品な盛り付けで、ロワゾーさんの編み出した「水の料理」を受け継いでいます(と思います)。前菜、メインと進んで、締めにチーズを頂くことにします。やはり『星に憑かれた男』に「エポワス」の逸話が書いてありました。何でもアメリカ人の批評家が酷評したのを気にして、チーズ担当のロワゾー氏の息子が近くの村を探し回って最良のエポワスを手に入れたとか。これは私も食せねばなりますまい。といっても、チーズに疎い私にはエポワスがどんなチーズなのか分かりません。チーズトレーの上に並べられた中で、エポワスは黄色がかった独特の色合いをしています。一切れ皿に取って頂いて口に入れますと、ちょっとトロリとした食感です。かなり臭いと聞いていましたが、そんなでもありません。ロワゾーさんを偲びながら味わって頂きました。

食事の後でレセプションに寄ったら、レストランのオーナーであるドミニク・ロワゾー夫人がいらっしゃいました。日本語版の『星に憑かれた男』にサインをお願いすると、快く引き受けて下さいました。その上、お忙しい中ワインセラーとか食堂とかを案内して頂き、ロワゾー氏の思い出話も語って頂き、感激のひとときを過ごすことが出来ました。折角の由緒ある食堂ですが、明日は早朝に出発しなければなりませんので、三ツ星レストランの朝食も食べれません。今日は長距離ドライブで疲れた上に、心地よい酔いも回ってきました。そろそろ休むとしましょう。。。







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