ギリシャの散歩道(1986年)





ギリシャは古代エーゲ文明の多くの遺跡を擁し、現在では西欧と東欧・中東の接点にあってさまざまな異国文化が混ざり合った独特の雰囲気をもった国です。首都のアテネは近代的な街並みですが、地方に行くと20−30年前の日本といった感じです。幹線道路はよく整備されていて主要都市や観光地を車で訪れるのは便利です。古代遺跡などは山の中にあることが多く、観光バスのツアーでなければ空港からレンタカーを借りて車で行くのが一番と思います。

私がギリシャを訪れたのは1986年の3月でしたが、寒くもなく暑くもなく日本の早春の息吹きが感じられてとてもよい気候でした。ギリシャでは3月は観光シーズンではないのでちょっと地方に行くとホテルはガラガラの状態で、閉鎖されているホテルも多く却って泊まる場所を探すのが大変でした。ただ、アテネは観光客も多いので到着の日位はちゃんとしたホテルを予約しておいた方がよいでしょう。

アテネ (ATHENS)

アテネはギリシャの首都であると共に、古代文明の遺跡が数多く残されている歴史の街です。市内のど真ん中に遺跡があるので観光にはすこぶる便利です。なんといっても一番の名所はアクロポリス(Acropolis)でしょう。小高い丘の頂上を切り拓いて巨大なパルセノン(Parthenon)神殿が建てられています。当時は修復中でしたが整然と並んだ柱は改めて古代の人達のパワーを感じられると思います。丘の登り口に半円形の劇場があり、現在でもミュージカルや劇が上演されるとのことです。もう亡くなりましたが、メリナ・メリクーリがコンサートで『日曜はダメよ』かなんかをこの古代劇場で唄っていたのをテレビで見たことがあります。ヨーロッパでは夜のゴールデンタイムによく他国のコンサートやスポーツ中継をやりますので、実際にその場所を訪れると感慨深いものがあります。

アテネ市内で車を運転するなどハッキリいって無謀というものです。私は飛行機の遅れで午後の早い時刻に到着する筈だったのが夕方になり、しかも左ハンドルのレンタカーに乗ったのも初めてという状態で夜の道を空港からホテルに向かいました。地図などは全く役に立たず、道路標識に至っては頭の中でギリシャ文字を英文字に変換している間に肝心の場所を通り過ぎてしまうといった始末で、結局3時間ばかし走り回った挙げ句にとうとう道に迷ってしまいました。こんな場合は、通りかかったタクシーを呼びとめ、目的の場所まで先導してもらうのが一番効率的です。勿論、タクシー代は払わないといけませんが。。。

ギリシャは三方を海に囲まれているので(AEGEAN・CRETAN・IONIAN SEA)、お魚を使った料理が豊富です。料理法はいたってシンプルで、ただ油(きっとオリーブオイルでしょう)でカラリと揚げるだけです。アクロポリスの丘の入り口の両側に観光客向けの小さなレストランが並んでいて、それぞれの店のショウケースに美味しそうなお魚のフライが並んでいます。ちょっと高めですがつい入ってしまいます。本当にお魚をまるごと揚げてしまうので、大皿にドーンと盛られて出てきます。余計な味付けやあんがかかっていないので淡白ですがアツアツのところを頂くととても美味しいです。ついついワインも進みますが、その後の丘の上までの歩きが辛くなりますのでワインはほどほどにしておいた方がよいでしょう。。。

スニオン岬 (CAPE SOUNION)

スニオン岬はアテネ市内から南東に車で1時間位の所に位置しています。丁度半島の突端にあり、夕日の美しいことでも知られています。この岬の突端には何故か古代のポセイドン神殿(TEMPLE OF POSEIDON)の廃虚が残されています。本当に土台と柱だけという感じです。アテネ市内から近いので夕方になるとバスを連ねて沢山の観光客がやってきます。

この辺りにはあまりホテルがなく、私は崖の下にあった小さな安ホテルに泊まりました。当然お食事は期待していなかったのですが、だだっぴろい食堂に行くと4−5組の泊まり客がいて、コックさんが大皿に盛ったお魚を見せて回っていました。どうやら、お客さんの気に入ったお魚があるとそれを料理して出すようです。いわば、その日のスペシャル料理といったところでしょうか。私が泊まった日は大きな鯛がお勧めだったのですが、旅の始まりの日でしたのでお金をケチッて普通の定食にしました。あれから10年以上経ちますがいまだに夢の中に出てきます。やはり旅に出たら何でもトライしてみるべきですね。後悔先に立たずです。それにしても、あの鯛は大きかったなア。。。

スニオン岬のポセイドン神殿跡





マラトン (MARATHON)

マラトンは、スニオン岬から北に車で1時間位の所に位置しており、日本人の大好きなマラソンの語源になったところだと言われています。古代の戦場の跡は皆そうでしょうけど、今では平和な畑が広がる田園地帯です。博物館があったらしいのですが、道路標識にその名前がチラッと出てくるだけで、車で行くとアッというまに通り過ぎてしまいます。

デルフィ (DELPHI)

デルフィは、マラトンから北西に車で3−4時間位の所に位置しており古代遺跡で知られています。山の中ですから遺跡の他には何もなく、歴史に興味のある人にとっては面白いのでしょうけどそうでない人には結構歩くのが辛いのではないでしょうか。私が泊まったホテルはかなり急な崖っぷちに建っていて、窓からの眺めは素晴らしいものの豪雨が降ったらひとたまりもなく土砂に押し流されそうな感じでした。デルフィにも円形劇場の跡があり、中には自由に入れますので最上段の石畳(つまり座席)に座って遥か下の地面に昔行われたであろう演劇か何かを想い浮かべるとまるで古代ロマンの風に包まれたような幻想的な気分になります。何故円形劇場がドーム型でなく半円形になっているかというと、私の想像ですが単に崖を削って階段をつけただけなのではないかと思います。

古代劇場跡(写真はEPIDAURUSのものです)



オリンピア (OLYMPIA)

オリンピアは、デルフィから西に車で1時間位のところにあるANDIRIOに行き、そこでフェリーに乗って対岸のRIOに渡り、更に海岸沿いに3時間ほど南下したところにあります。海岸からは少し離れているので山里といった感じです。オリンピアは勿論オリンピック発祥の地として知られており、現在でも聖火の採火式は神殿(TEMPLE OF HERA)跡(というか殆ど瓦礫の山とでもいった方がよさそうな)でギリシャの女優さん達によって厳粛に執り行われます。夜だと更に幻想的な雰囲気になるのでしょうけど、なにせ太陽光から直接採火するので真昼しかできないようです。

オリンピアの遺跡は畑や林の中に散在し、ホテルも直ぐ近くにあります。このあたりの畑にはレモンの木が沢山植えてあり、春風にレモンの実がそよそよと揺れるさまはなかなか風情があります。

ミケーネ (MYCENAE)

ミケーネは、オリンピアから東に車で3−4時間位のところにあります。できればその前にスパルタ(SPARTI)にも寄りたいものです。ミケーネは古代都市の一つですが、他の遺跡に比べると保存状態はあまりよくないようです。場所が平野の中に忽然と現れるはげ山(というか小高い丘というか)の頂上にあって交通の便も悪いので荒れてしまったのでしょう。ライオン門(LION GATE)という通路も残ってはいるのですが本当に瓦礫の山といった感じです。

ミケーネからアテネに戻る途中にコリントス(KORINTHOS)という町があります。なんということもないところかと思って思いっきり高速道路を飛ばしていたら、橋を渡ったとき眼下に不可思議なものを見たような気がしました。暫く走ってやはり気になり、わざわざまた道を引き返してその橋を渡ってみました。世界七不思議といいますが、私なら絶対この地峡を第一におしたいと思います。ナント、地続きだった(であろう)半島を真っ二つに切りとって運河にしているのです。上から見ると、殆ど垂直に切り立った崖の遥か下を船が行き来しているのが見えました。相当の難工事だったらしいですが、人間の力も大したものだと感心しました。ギリシャに行くのでしたらここは絶対に見逃せない観光名所です。

コリントスの地峡



コリントスからアテネに戻る途中でお昼時になったので、どこかレストランはないかと探したのですがあいにく見当たりません。丁度道を歩いていたおばあさん(おばさん?)に聞いたら近くにすごく美味しいところがあるとのこと(何語でどうやって会話したのかいまだに不思議ですが)。あばあさんの指し示す方角に行くと、とある小さな食堂があり、本当かな?と思いつつ中に入ってみればちょうど海小屋風の感じでメニューはと聞いたら魚のフライがあるとのこと。しばらく無料のパン(の中身だけ)を食べていたら、(多分)カマスの揚げ物が大皿に盛られて出てきました。かなり高温で揚げたらしくアツアツで香ばしく、しかもサクサクとした食感は絶品で最高でした。そのうちにナント先ほどのおばあさんが店の奥から出てくるではありませんか。自分のお店を教えたのです。でも満足でした!









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