飛行機による旅がまだまだ高値の花だった頃、地方に住む若者にとっては東京という言葉のもつ響きは何か憧れにも似たものがありました。それは未来の自分が住む夢の都市にも感じられたかもしれません。でもそれは架空の想いでなく、一本の線路で結ばれた現実の話だったのです。それを可能にしたのはブルートレインという愛称で今でも運行されている寝台列車です。最近では大分本数も減りましたが、朝焼けの瀬戸内海とか富士山を列車のベッドから見るのはなかなかロマンチックなものです。また、列車編成にもよりますが、食堂車でディナーとビールを頂きながらネオン輝く大都市の夜景を眺めるのも旅情をかきたてます。
東京駅のブルートレインの発着ホームは丸の内口と八重洲口の中間地点に位置しています。昔は丸の内側にある中央線のホームから八重洲側にある新幹線のホームまで見通すことができたようですが、今では中央線のホームは遥か高いところに移されて空中回廊と化し、もはや端から端まで見通すことはできません。地下には総武快速線や京葉線が通り、まるで巨大な迷路の趣きです。松本清張さんが生きていらしたら『点と線』でなく、『線と面』といったタイトルの推理小説を書かれたかもしれません。丸の内のビル街も皇居を見下ろすのは不敬の至りということで厳しく建物の高度制限が課せられていましたが、今や超高層ビルが林立しています。あの頑丈な丸ビルでさえ跡形もなく取り壊され、建て替えられているのですから世の中変わったものです。
そんな東京駅でも変わらないところがあります。八重洲地下街と大丸デパートです。八重洲側の改札口から地下に降りていきますと、そこには巨大な人工の地下空間に商店街が広がっています。場所柄、飲食屋さんと土産物屋さんが多いようです。旅の楽しみのひとつは列車に乗る前の待ち時間を使って食事をすることです。逆に、旅の重荷は列車の出発時刻を気にしながらお土産を探すことでしょう。別に自分が食べる訳でなくても、やはりお土産探しはそれなりに神経を使います。八重洲地下街にはそのどちらも効率的に行える機能が備わっている訳です。なかでも、『東京名産店』と『全国名産店』のお店はとても重宝で、東京を出る方には前者が、地方から帰ったもののお土産を買いそびれた方には後者が役立ちます。東京に住んでいる人でも地方の名産品の味が懐かしくなったら、あちこち探し回る前にここに来られることをお勧めします。大抵のものは揃っています。
大丸デパートは、地上から上ははっきりと区別できますが、地下部分はどこからどこまでがデパートの区画なのか分からずまるで八重洲地下街と一体になっているように見えます。お酒のコーナーはそんな中にあります。大丸デパートだけあって、ワインも大変充実しています。海外から直輸入している銘柄もあるようです。国別に見ても珍しいワインが並んでいます。イギリスの白ワインが3種類揃っているのもここだけではないでしょうか?
私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。