セゴビア・ALCAZAR
飛行機は定刻にパリのシャルル・ド・ゴール空港を出発しました。パリからマドリッドまでは2時間位の短いフライトです。それでも、一応は国際線ですからちょっとした飲み物と軽いお食事がでます。マドリッドに着いたら直ぐに車を運転しなければなりませんので、アルコールは極力(キョクリョクですよ。。)控えます。パリの上空は厚い雲に覆われていましたが、飛行機がピレネー山脈を越える頃から雲が途切れ、やがてスペインの大地が眩いばかりに輝いて見えてきました。『おぉ、翼よあれがスペインか!』と思わず窓から地上を眺めます。青く見えるのは湖でしょうか?沢山ありますね。スペインの内陸部は乾燥した台地だと想像していたのですが、思った以上に緑が豊かなようです。
やがて飛行機は徐々に高度を下げ、昼下がりのマドリッド・バラハス空港に着陸しました。窓から見ますと、首都の空港とは思えない位にこじんまりしています。どこの空港でも幅をきかせているジャンボ機の姿が殆ど見えません。飛行機から降り、入国審査の窓口に並びますが殆どフリーパスの状態です。パスポートにも入国のハンコを押してくれません。ちょっと残念ですねぇ。と、ここまでは順調でした。さて、バッゲージ・クレームで指定されたターンテーブルの前に行きますと、最初チョロと荷物が出ただけで後続の荷物が全く出てきません。最初は『ここはぁスペイン♪♪♪』と鷹揚に構えていましたが20分経っても音沙汰なしです。日本でしたらクレームが出て(何時もの軽い駄洒落です)大騒ぎになるところですが、誰も何も云わず辛抱強く待っています。30分程待って、ようやく残りの荷物が出てきました。
両替を済ませ、早速Hertzさんのカウンターに向かいます。レンタカー会社のカウンターは税関の出口から直ぐのところにあります。おや、4−5人が2列に並んでいます。私は日本から予約してあるし、キーを貰うだけ。。。と思っていたら、これが大間違い。1人のお客さんを片付けるのに30分位費やすのです。お客さんもお客さんで、カウンターにへばりついたようにあーだ・こーだと言って動きません。窓口の女性も大らかなもので、行列など一向に気にする様子もありません。やっとのことで私の順番が来ました。手続きは割りと簡単に済んだのですが、最後に『車の燃料(ガソリンではない)は満タンではありません。それと、事故を起こしたら、xxxペセタのお金を払わないといけません。。。』とか何とかおっしゃたのですが、急いでいたせいもあってか私の耳には何も残りませんでした。そういう訳で、車のキーが貰えたのは空港に到着してから2時間近く過ぎていました。予定では、今ごろはセゴビアを観光していてもいい時刻です。駐車場で指定された車に乗り込みますと、小型のセダンながら7、000km位しか走っていないピカピカの新車です。何でもスペインの国民車らしくて、『SEAT(シアット)』と云うのだそうです。事実、この車はスペインの至る所で見受けられました。国民車だけあって、トランクはちょっと小さめですがクーラーはよく効いています。座席とミラーの位置を調節して準備O.K.です。ふと、燃料計を見ますと残りは1/4を切っています。きっと前に借りた人が満タンにしないで返したのでしょう。こういうことは結構不安感を煽ります。早いとこ給油しないと。。。と思いつつ出発しようとします。おっと、その前にバックギアの入れ方を確かめておかないと。ここで解説です。スペインのマニュアル車のバックギアの入れ方は、レバーを押し付けてバックの位置に入れる方法とレバー下のつまみを引き上げてバックの位置に入れる方法の2種類があります。これだけは運転する前に必ず確認しておかなければなりません。本当は他にもあるんですけど。。。
見知らぬ土地での車の運転はなかなか大変です。先ず空港から出るのが一苦労です。今回は事前にBUDOYAさんに道順を聞いておきましたので少しは安心です。レンタカー会社の駐車場から出ますと道は一方通行ですから、これは問題ありません。この後道は左にカーブする筈です。その後に2階出発ロビーの前を通ってA10という高速道路に入り、その後マドリッドを環状に走るM40に入り、更にA6に入ってセゴビア方面に分岐する道を選べばよいのです。こう書くと非常に複雑そうに思えるかもしれませんが、実際は道路が良く整備されている上に、標識も万全ですのでそんなに迷うことはありません。それは後で知った話で、とにかく今は空港を出るのに必死です。私が旅行前に覚えた『CERVEZA(セルベッソ:ビール)』と並んで重要な『SALIDA(サリダ:出口)』を探します。駐車場を出て300m位走ったところで『SALIDA』の標識が見えました。『ウン、快調・快調』と思っていたら、何と道が二つに分かれているのです。それも、両方とも左にカーブしています。『あーーーつ、聞いていないよぉ。。。』と思いましたが道の真中で止まって考える訳にはいきません。もうイチかバチかです。何となく出口っぽい右側の道を選びました。車はアッという間に高速道路に入ります。出発ロビーの前を通るどころか、空港は遥か後方になってしまいました。『ま、済んだことはしょうがないもんね。。。』と思い直して標識を確認します。オヤ、何時のまにかA10を走っています。何はともあれ、結果的に正しいルートに乗ったようです。ヤレヤレ、どうやら第一関門は突破しました。
首尾よく予定のルートに乗ったのは良かったのですが、どうも燃料切れが心配です。スペインの高速道路ではサービス・エリアが充実しています。名前に”Nーローマ数字(例:N−Y)”の付く道路では、殆ど1km毎にサービス・エリアがあると云っても過言ではありません。ところが、そのサービス・エリアの標識の色に2種類あることに気がつきました。一つは青地で、もう一つは白地です。その違いがよく分からないまま、とある白地の標識のサービス・エリアに入っていきます。。。日本であれば、サービス・エリアに入っても、そのまま高速道路に戻れる筈です。ところがこの道はどんどん高速道路から離れていきます。あれよあれよと云う間に車は小さな村に入っていきました。暫く走ると確かにガソリンスタンドはありました。ま、天の助けとばかりに給油スタンドの前に車を止めます。スペインでは、いわゆる『スタンドの店員さん』と称される人はいません。お客さんが勝手に給油して、後でレジでお金を払うシステムです。私もこのシステムについては慣れていますので問題ありません。問題はどうやって車の給油口カバーを開けるかです。。。『えっ、そんなことも知らないで車を運転するの?』と思われるかもしれませんが、そうなんです。昔ながらの方法で、給油口の近くにキーを差し込む穴があるだろうと探したのですが見つかりません。あるいは、運転席の傍に給油口を開けるそれらしきレバーがないか見たのですが、どのレバーをいじっても給油口は開きません。これはアキマセンワ。。。なんて云っている場合ではありません。私の車の後ろには順番待ちの次の車が並んでいます。イカン、ニースの料金所事件(ここをご覧下さい)の二の舞です。
呑気に写真なんか撮っている場合じゃないでしょ!
とりあえず、隣で給油されていたおじさんに声を掛けます。とても親切なおじさんで、自分の車はそっちのけにして私の車を見てくれました。一通り私がやったことを反復したら同じ結果になったので(当たり前でしょ!),今度は車のマニュアルを見せるよう云われました。なるほど、それは正しいアプローチだ!と私は感心しました。ところが、何度マニュアルをひっくり返しても給油口を開ける方法が書いてないのです。アタマにきたのか、そのおじさんは無理やり給油口を開けようとします。チョット、チョット、困りますよぉ、カバーを壊されちゃあ。。。はやるおじさんを押しとどめ、今度はスタンドに併設されているお店のお姉さんを引っ張り出してきます。もう大騒ぎです。お姉さんもおじさんと(従って私と)同じことをして、その上マニュアルを見てあーだこーだと試しますが結局うまくいきません。全員がほとんど諦めかかった頃(諦めては困りますぅ)、突然カチャという音がしました。車のキーをいじっていたお姉さんがキーに付けられたボタンを押したらしいのです。問題は一気に解決しました。キーの開閉ボタンを押すことによって、座席のドアやトランク、それに給油口のカバーもロックがかかったり解除されたりする仕組みになっているのです。お姉さんはもう一度やり方を説明してくれました。言葉は分からなくても私にも理解はできます。さあ、給油しようとしたら今度はおじさんがまた最初から説明します。『分かった、分かった』とは思いましたが無碍にもできず、また最初からおじさんの解説を聞きます。最後におじさんは『この車はディーゼル車だからガソリンでなくこっちを使うんだよ!』と念を押してくれました。危ない!危うくディーゼル車にガソリンを入れるところでした。。。
高速道路からすっかりルートを外れてしまいましたので一般道を通ってセゴビアに向かいます。時計は夕方の4時近くを指しています。今夜は9時にBUDOYAさんとお会いすることになっていますので、あまりゆっくりは出来ません。頼りない田舎道の標識を辿りながらも、ようやっとセゴビアに着きました。こじんまりした町ですが何処に何があるのか分かりません。もう町の中心を目指して進むしかありません。狭いクネクネと曲がった道を進んで行くうちに、とある崖下に着きました。見上げますと何やら巨大な教会の塔が見えます。これは地球の歩き方に出ていた『カテドラル』に違いない!と、そこで車を止めて歩いて行くことにします。外は強烈な日差しです。頭がクラクラします。なだらかな坂を登っていきますと、狭い路地の先に大きな広場があります。スペインで見た最初の広場です。とても美しいですね。マヨール広場というのだそうです。本来であればマヨール広場に突き出したBARで一休みしたいところですが、時間がありませんので先ず白雪姫のモデルとなったアルカサルに向かいます。
マヨール広場からアルカサルまでは細い石畳の道を歩いて10分位でしょうか。道の両側には土産物屋さんが並んでいます。ふと見ますと、鍔の広いおじさん向きの帽子が500ペセタ(300円)で売られています。日本なら2千円はするでしょう。これからのことも考えて早速買い込んでみますと、これがちょうどいい按配です。日本でなら恥ずかしくて被れませんが、スペインなら平気です。頭だけでも日差しが遮られると大分楽になってきます。先を急ぎましょう。暫く歩きますと急に視界が開けます。広場の入口に門があり、観光客が集まっているところをみますとこれがアルカサルのようです。広場の先は広大な平野へと続く崖になっているのですが、アルカサルはその崖をうまく使って建てられています。手前の方は普通の城壁スタイルですが、奥の方にディズニーランドで見慣れた優雅な塔を持つお城が見えます!これがアルカサルかぁ。。。と暫し見とれてしまいます。かようにロマンチックなお城なのです。
時間は惜しかったのですが、入場券を買ってお城の中に入ります。中は観光客で一杯です。お城の内部は結構豪華な造りになっていて、昔の王侯貴族の贅沢な暮らしぶりが見てとれます。武器庫などもあって、中世の騎士の鎧や剣などが山のように陳列されています。
アルカサルからお城の周囲を眺めますと、緑のない荒地が広がっています。ですが、決して荒涼たる風景というのではありません。中世にタイムスリップしたような不思議な気分になります。
さっさとアルカサルを見物した後は、セゴビアのもう一つの名所であるローマ水道橋に向かいます。ローマ水道橋は、さきほどのマヨール広場まで戻って更に町外れまで歩きます。と云っても10分位ですが。。。アルカサールへの道が狭くごちゃごちゃしていたのに比べ、水道橋に向かう道はそれ程広くはないものの、通りの両側には高級なお店が結構あります。洒落た感じの看板も見えますね。
私はこういう大人のセンス溢れた看板をみると直ぐ写真に撮りたくなる。。。
セゴビアの名物料理は『仔豚の丸焼き』なのだそうですが、時間がない上にあまりの暑さで食欲もわきません。お店のショーウインドウを覗いただけで仔豚クンを1頭助けてあげました。
他にも水道橋の近くにはレストランが沢山あります。でも、スペインの何処に行ってもBARとレストランは星の数ほどもあると知ったのは大分後のことです。
これは普通のレストランの看板のようです。こういうお店ならつい入りたくなりますよね!
そうこうしているうちに水道橋に辿り着きました。周辺の建物はちょっと寂れた感じですが、その中で巨大な水道橋は威容を放っています。昨年訪れたフランスのポン・デュ・ガールと比べますとかなりスマートです。そのせいか、イマイチ迫力に欠けます。まぁ、昔の人は大したもんだ。。。とか思いつつ、もと来た道を引き返して車のところにもどりました。時計はもう6時を指しています。急がないとBUDOYAさんとの約束の時間に遅れてしまいます。今夜の宿である『パラドール・トルデシージャス』までは、セゴビアからN110を戻ってN−Yに入り後は一本道です。150km位の距離ですから2時間もあれば充分着けるでしょう。。。
私のお勧めのワインは次の通りです(説明文はラベルから転記しました)。
- (赤) スペイン: ALCAZAR DE SEGOVIA RESERVA (1995)
- 特に解説はありません。
スペインでは酒屋さんだけでなく、いろんなお店でワインが売られています。日本では絶対みかけないような、高速道路の売店ですら売られているのです。観光名所では、その名前を付けた特製のワインを見つけることができます。かといって、そのワインが地元で造られたものとは限りません。有名産地のワインに観光名所の名前を入れてお土産ワインにする訳です。つまり、中身はさておき、そのラベルを付けたワインは他では手に入らないということです。これは私のような珍しがり屋にとっては、結構希少価値があります。ましてや、白雪姫のモデルとなったお城であれば尚更です。初日から1本ゲットするのも何ですが、ここは買うしかないでしょう!
このワインは暫くとっておこうかと思っていたのですが、思い切って栓を抜いてしまいました。そうなったら、じっくり味わってみないといけませんね。何しろ、13日間も肌身離さず持ち歩いたワインですからね。で、お味の方は。。。と云いますと、リオハながら軽い赤です。でも、なかなか美味しいです。肉料理とまではいかなくても、辛口のカレーなんかにも合います。カレーを食べた後は何となく口の中が脂っこくなりますが、この赤ワインと一緒に頂くと不思議とサッパリします。この赤ワインの渋味がカレーの複雑な香辛料の味を洗い流してくれるからなのでしょうか?
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